注目されていないだけで、実は優れたデザインはたくさんある。インテリアスタイリストの川合将人さんが運営するのは、まだ知られていないデザイナーや日本に入っていない家具・照明を独自のルートで扱う〈バンドル ギャラリー〉だ。
このギャラリーとして再生された個人住宅〈M氏邸〉についてもまた、同じことが言える。設計を手がけた進来廉(すずき・れん)はモダニズムの巨匠ル・コルビュジエのアトリエで学んだ最後の日本人建築家であった。その後もジャン・プルーヴェやシャルロット・ペリアンなど20世紀のパリで活躍していた建築家とも協働している。
「この住宅に偶然出会い、進来廉さんのことを知りました。彼の経歴や作品を紐解いていくと興味深い情報が次々と出てきて、残されていた住宅に夢中になりました」と川合さん。
改装が加えられていた部分をできるだけオリジナルに戻し、バスルームやキッチンなどの水回りは違和感がないように新たに内装を施した。その結果、モダニズムの雰囲気が色濃く残る建物に蘇らせたのだ。
スタイリングが際立つ、現代のモダン空間
ここにある家具は、すべて川合さんが新たに選んだものだ。特に詳しいイタリアのヴィンテージをはじめ、現代の家具ブランドも多数扱う。またフランスの職人が手作業でオリジナルのサイズや素材で再現するセルジュ・ムイユの照明のショールームとして、受注生産の注文も受ける。
「僕が好きなのはコアなデザインや変わったものが多いのですが、マニアックなものばかりじゃないんです。一点もののアートピースやヴィンテージは高価ですが、買いやすい価格帯のものも揃えています」
例えばデンマークの〈フラマ〉は、天然素材や石を使った有機的なデザインが馴染みやすく、イタリアの〈ゼウス〉は直線で構成された金属の家具がスタイリッシュでモダン。共にデザイン性の強い家具とも、ヴィンテージとも相性がいい。
年数回、企画展を開催し、そこで新たなデザインに触れられるのも楽しみの一つだ。今後はオリジナルの照明作品、イタリア家具の企画が予定されている。さらに新たなショップを計画中で、そこでは、より幅広い商品を見せていくという。
「スタイリストになる前は、青山のインテリアショップで働いていました。だから家具について話し、売ることは、僕の原点なんです」
インテリアのプロだからこそ熟知する、数々の知られざるデザインの魅力を存分に味わわせてくれる。