伝説の英国人天才時計師の遺志と意匠を現代に継ぐ
時計の精度は、17世紀後半から18世紀後半にかけてイギリスで飛躍的な進化を果たした。大航海時代だった当時、自船の現在位置の経度を知るために、出航地との時差を正確に計れる高精度な航海用デッキクロック(マリンクロノメーター)が不可欠だったからだ。
1764年に息子とともにロンドンで〈アーノルド&サン〉を設立したジョン・アーノルドは、その優れた作り手として名を馳せた一人であった。また新たな脱進機やバイメタルテンプ、らせん状ヒゲゼンマイなどを発明し、懐中時計の高性能化にも貢献。現在、高精度時計の意味として使われるクロノメーターという言葉も、アーノルドの考案である。
彼の息子の代で途絶えた〈アーノルド&サン〉が1995年、スイスで復活を果たした。当初は、方位が知れる回転インナーベゼルが備わるモデルやGMTウォッチといった、冒険や旅にまつわるモデルを製作。そして2010年、名だたるブランドにクロノグラフや複雑機構などを提供するムーブメント会社「ラ・ジュー・ペレ」傘下となったことで、高級時計ブランドへと転換を図った。
開発力と技術力に秀で、充実した製造設備を持つラ・ジュー・ペレは、それらをすべて注ぎ込み、オフセットダイヤル、シンメトリーなムーブメント構成といったアーノルドによる懐中時計に範を取る英国スタイルを、腕時計で再現しようと試みた。また仕上げや装飾に関しては、伝統的な手作業を踏襲。クラシカルで審美性も高く、かつ個性豊かであることが、〈アーノルド&サン〉の強みである。
2012年、ラ・ジュー・ペレを所有するプロサー・ホールディングスを〈シチズン〉が買収。新体制となってからもそのスタイルは堅持され、高級時計市場に独自の地位を築いている。
【Signature:名作】ネビュラ
7つのブリッジが織り成す完璧なシンメトリー

モデル名は、星雲の意。なるほどダイヤルに露わになったムーブメントの三角形のブリッジが、放射状に外へと広がる様子は、星々の拡散を想起させる。ゼンマイを収めた香箱をダイヤル上部に2つ並列し、下側にはテンプの横に同サイズのスモールセコンドを配置。
結果、7つのブリッジによるシンメトリーな美が構築された。スイスで受け継がれた美意識とは一味違う、これぞまさに英国スタイルである。丁寧に面取りされた各ブリッジをはじめ、すべてのパーツの仕上がりは完璧。見せるにふさわしい入念な手仕上げが行き渡る。
径40mm。手巻き。SSケース。3,520,000円。
【New:新作】コンスタントフォース トゥールビヨン 11 イエローゴールドエディション
英仏2人の天才時計師たちによる友好関係

ジョン・アーノルドと初代アブラアン-ルイ・ブレゲは、互いの息子をそれぞれに弟子入りさせるほど才能を認め合っていた。そしてアーノルドの死後、彼が製作した懐中時計に初代ブレゲは自身が発明したトゥールビヨンを組み込み、アーノルドの息子に贈った。
本作は、その天才時計師の合作をモチーフとする。ケースバックに姿を見せるトゥールビヨンを従えたシンメトリーな構造のムーブメントは、オリジナルにほぼ忠実。高温焼成したグラン・フー エナメルによるダイヤルも、見応え十分である。世界11本限定。
径41.5mm。手巻き。18KYGケース。価格要問い合わせ。