鉄道時計を出自とする、高精度なタフネスウォッチ
1891年4月19日、米国オハイオ州キプトンで2台の機関車が衝突し、大破炎上する事故が起こった。“キプトンの悲劇”と呼ばれる米国鉄道史上、最悪の事故の調査を任されたのが、後に〈ボール ウオッチ〉を設立するウェブスター・クレイ・ボールであった。
綿密に調査を進めた彼は、事故の原因が機関士が持っていた時計が4分遅れていたことと、鉄道会社のずさんな時間管理にあることを突き詰めた。そして1893年、ボールは鉄道員が使用する鉄道時計の認定基準「レイルロード・アプルーブド」を策定。自らも〈ボール ウォッチ〉カンパニーを興し、認定基準を満たす高精度な懐中時計で、まだ発展途中だった米国の鉄道網の安全を守った。
「あらゆる過酷な環境のもとで正確な時を告げる」という創業者が掲げたミッションは、現在の〈ボール ウォッチ〉に受け継がれている。そのための耐蝕性に優れる高性能スティール904Lをケース素材に導入。加えて繊細なヒゲゼンマイを金属製のケージで保護し、耐衝撃性を高める「スプリングロック耐震システム」やリューズを保護する「セーフティロック・クラウンシステム」といった独自機構も開発している。
中でも時分針とインデックスに取り付けた「マイクロ・ガスライト」は、ブランドの象徴である。これは、蛍光塗料を内部に塗布したガラスチューブ(カプセル)にトリチウムガスを充填させた自発光システム。畜光を必要とせず、24時間強力に自発光して常に視認を確保してくれる。また高精度であることは、鉄道時計の使命であった。ゆえに現行モデルの多くが、公的機関COSCによるクロノメーター検定の認定を取得。堅牢で見やすく、正確。〈ボール ウォッチ〉の腕時計は、実に頼もしい。
【Signature:名作】エンジニア ハイドロカーボン オリジナル
タフネスを極めたレトロ顔ダイバーズ
「タフ&ディペンダブル」(丈夫で信頼性が高い)という開発精神を突き詰めた、フラッグシップ・コレクションを象徴する一本である。前述した「スプリングロック耐震システム」と「セーフティロック・クラウンシステム」に加え、歩度調整のための緩急針を固定する「スプリングシール」も搭載。
さらにミューメタル(ニッケル鉄合金)製インナーケースと独自の「アモータイザー衝撃吸収リング」がケース内に備わり、8万A/mの高耐磁性能と7500GSの耐衝撃性を兼ね備える。60年代調のレトロ顔だからと、実力を侮るなかれ。
径42.85mm。自動巻き。SSケース。495,000円。
【New:新作】エンジニア マーベライト クロノメーター
レインボーカラーに輝くマイクロガスライト
華やかなターコイズ・ブルーのダイヤルが、タフさが売りの〈ボール ウォッチ〉にあって異彩を放つ。しかしSS素材には904Lを用い、ミューメタルインナーケースによる8万A/mの高耐磁とクロノメーター取得の高精度を誇る。
904Lは、一般的な316Lスティールよりも磨いた後の輝きが白くて強く、その審美性がブレスレットの中リンクに感じ取れる。インデックスには、7色のマイクロガスライトをセット。光が当たった状態でも、自発光する色調が、ほんのりと浮かぶ。
径40mm。自動巻き。904LSSケース。407,000円。