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ブルータス時計ブランド学 Vol.50〈ノモス グラスヒュッテ〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第50回は〈ノモス グラスヒュッテ〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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シンプル&高品質な、ドイツ最大の時計ブランド

19世紀から時計産業が栄えたグラスヒュッテで、東西ドイツ統一後、初めに新興した時計ブランドが〈ノモス グラスヒュッテ〉であった。1992年には、4つのファーストコレクションを発表。いずれもケースは35mm以下と小さく、ダイヤルデザインはシンプルかつ端正だった。

そのデザイン性は、バウハウスの影響だと解釈されやすいが、実はそれ以前、工業製品の良質化を試みたドイツ工作連盟の精神を受け継いでいる。その4コレクションはどれも薄型手巻きムーブメントの名機プゾー7001を搭載したことで、マニアックな時計ファンの心を掴んだ。

市内の小さなアパートの一室に始まった工房は、後に丘陵地に新設され、デザイン室を首都ベルリンに設立。現在ではドイツ最大の機械式腕時計ブランドへと成長を果たした。その原動力となったのは、ファーストコレクションから変わらない機能的かつ美しいデザイン性と積極的なムーブメント開発である。

デザインでは、これまでさまざまなモデルで150以上もの受賞歴を持つ。だからだろうか?〈ノモス グラスヒュッテ〉の愛用に、建築家やデザイナーといったクリエーターが多いのは。2004年以降は順次、ムーブメントパーツを自社製に切り替え、高性能・高品質を保証してきた。

ケースバック側でムーブメントを大きく覆う4分の3プレートや、ゼンマイが収まる香箱と歯車の装飾仕上げなど、グラスヒュッテ伝統のスタイルを継承。2014年には、スイスでも稀な、脱進機とヒゲンマイの自社製造に成功し、今ではムーブメントに関する内製率は、実に95%を超えているという。

2013年以降、高級なゴールドウォッチも製作しているが、主力は小ぶりなSSウォッチであり、グラスヒュッテ製の高品質を身近にする。

【Signature:名作】タンジェント

ドイツ時計史に名を刻む、大ベストセラー機

ノモス グラスヒュッテのタンジェント


1992年に誕生したファーストコレクションの1つにして、ブランドを躍進させた大ベストセラーモデルである。初代からほぼ変わっていない外観は、創業者が発見した1937年のデザイン画に範を採っているといい、ドイツ流のクラシカルモダンの典型例だといえよう。

シルバーホワイトのダイヤルとコントラストを成す、アラビア数字とバーインデックス。それらを正確に指し示すスリムな針は、どれも鉄を熱して発色させた本物のブルースチール製である。誕生から30年以上経た今も、決して古びれない高いデザイン性は、まさに普遍の機能美であり、今後も色褪せることはない。

径35mm、手巻き、SSケース。371,800円。

【New:新作】オリオン・ネオマティック39・ニューブラック

ミニマルかつ上質なモノトーン仕立て

同じく1992年から続く、ロングセラー機。丸みを帯びたベゼルやロングホーン型のラグなど、ケースの造形に凝る。一方ダイヤルは、バーインデックスだけの構成と、ミニマル。しかしわずかに膨らんだボンベとし、11本のバーインデックスは型打ちによるアプライドとするなど、やはり凝った作りになってる。

亜鉛引きによるマットブラックのダイヤルとシルバーカラーの針・インデックスによる静謐なカラーリングは、夜会にも最適。ストラップは、ホーウィン社製のシェルコードバンを用い、上質な艶感を湛えている。

径38.5mm、自動巻き、SSケース。655,600円。

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