Wear

Wear

着る

ブルータス時計ブランド学 Vol.11〈チューダー〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、2022年に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第11回は、名門に続けて生まれて世界へ広がる、〈チューダー〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

連載一覧へ

築かれた信頼のもとに生まれた、新しい価値

〈チューダー〉は、〈ロレックス〉の創業者ハンス・ウイルスドルフが立ち上げた、もう一つのブランドである。まず1926年に、彼の代理でスイスの時計ディーラー兼メーカーが〈The TUDOR〉の名を商標登録。その10年後にウイルスドルフ自身がその名を再登録し、1946年に「モントル チューダー S.A.」を設立した。そして彼が何年も温めてきた「ロレックスの技術と信頼をもって、確固たる品質と先駆性を備えた腕時計」の製作をスタートさせた。

彼が言う「ロレックスの技術と信頼」とは、屈強な防水性をかなえたオイスターケースと高効率なパーペチュアル自動巻きローターである。ゆえにチューダーは、長きにわたりロレックス製のケースとブレスレットを使用してきた。1952年、モントル チューダー S.A.初の「チューダー オイスター プリンス」を発表。高防水の自動巻き腕時計は、同年英国海軍による北グリーンランドの科学探索チームに採用されたことが追い風となり、大成功を収める。

1954年には初のダイバーズウォッチ「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー」が誕生。フランス海軍で採用されたことで、軍の潜水士が望むタフで見やすい機能を進化させていく。

また〈チューダー〉は、1970年から魅力的なクロノグラフの作り手として知られるようにもなる。その初代クロノグラフに着想を得た現代版モデルを2010年に発表。大ヒットとなったことで、〈チューダー〉はヴィンテージ路線に舵を切った。

その最たる好例が、2012年に発表された「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー」の後期モデルに範を取る「ペラゴス」と、歴代ダイバーズからディテールを抽出し組み合わせた「ブラックベイ」だ。これらがまとう適度なヴィンテージ感は、スタイリッシュであり、特に「ブラックベイ」は時計ファンのみならず、ファッショニスタをも魅了した。

2015年、自社製ムーブメントを発表。シリコン製ヒゲゼンマイによる優れた耐磁性と高精度とで、機械的な魅力が一層高まった。

見た目とメカニズムが優れ、さらにコストパフォーマンスにも秀でる。〈チューダー〉は数あるスイスの時計ブランドの中で、トータルバランスの良さが群を抜く。2018年に日本に本格的に上陸を果たすや、たちまち大人気ブランドとなった、これが理由だ。

【Signature: 名作】ブラックベイ

上質なヴィンテージ感をまとう

チューダーの名作時計 ブラックベイ

2012年に登場した、コレクションのファーストモデル。2016年に自社製ムーブメントに置き換えられた。

歴代「チューダー オイスター プリンス サブマリーナー」から1954年誕生の初代からインデックスの形状を、リューズは1958年製モデルから、そして特徴的なスノーフレークと呼ばれる時針を1969年製モデルから受け継ぐ。

アルマイト加工した逆回転防止ベゼルのインサートリング、サイドにリベットのヘッドが見えるブレスレットも、1950~60年代の〈チューダー〉のダイバーズにあったスタイルだ。

径41mm。自動巻き。SSケース。474,100円。

【New: 新作】 レンジャー

歴史的冒険にオマージュを捧ぐ

チューダーの新作時計 レンジャー

1952年に「チューダー オイスター プリンス」を携行した、英国海軍による北グリーンランドの科学探検70周年を記念し、2022年夏に登場した、新コレクション。

時針と分針の長さを極端に変え、時刻表示の視認性に特化したツールウォッチであり、自身の形状や3・6・9・12をアラビア数字としたインデックスのデザインは、1960年代製のRef.7995から引用した。

ブレスレットは、独自の“T-fit”セーフティキャッチ付きフォールディングクラスプを搭載。全5段階、最大8㎜の長さの微調整がバックル部分でできる。

径39mm。自動巻き。SSケース。371,800円。

連載一覧へ