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ブルータス時計ブランド学 Vol.7 〈ブランパン〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、2022年に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第7回は、18世紀にルーツを遡る最古参ブランド、ブランパン。 

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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最古参の復活劇

創業は、1735年。〈ブランパン〉は、現存する最古の時計ブランドである。およそ2世紀にわたって創業者一族による経営が続き、工房を引き継いだフィスター家の時代には、今あるダイバーズウォッチの始祖となった「フィフティファゾムス」を1953年に生み出すなど時計製造の歴史にいくつもの功績を築いてきた。

しかし1969年、日本で開発されたクォーツムーブメントの登場によってスイス時計業界は衰退しはじめ、〈ブランパン〉も1970年代後半に休眠を余儀なくされた。老舗名門メゾンの消滅の危機を救ったのは、高級ムーブメント会社フレデリック・ピゲ社であった。1982年に商標を手に入れ、翌年には新生〈ブランパン〉初のモデルを発表。この時、機械式時計だけに特化し、ケースは丸形しか使わないという今日まで続くブランドのポリシーが打ち立てられた。

そして1986年に世界最小の「ミニッツリピーター」を開発したのを皮切りに、複雑機構で優れた技術力を発揮してゆく。その集大成が1991年に誕生した、「ミニッツリピーター」「トゥールビヨン」「スプリットセコンドクロノグラフ」「パーペチュアルカレンダー」「ムーンフェイズ」を一つに統合した「1735」である。この超複雑時計は、機械式時計再興の一つの象徴として、時計史にその名を残す。

今も複雑機構の数々を自社開発・製造し、老舗らしいクラシカルなデザインを得意とする。と同時に2007年にレギュラーコレクションに返り咲いた「フィフティ ファゾムス」を筆頭にスポーツウォッチでも評価は高い。クォーツムーブメントに翻弄された老舗メゾンは、機械式時計の伝統を未来へとつなぐ。

【Signature: 名作】ヴィルレ ウルトラスリム

実用性と審美性に秀でた薄型ドレスウォッチ。

ブルータス時計ブランド学 Vol.7 ブランパン

スリムなステップベゼルが、実にエレガント。ローマ数字を配したダイヤルの上を、スケルトナイズしたリーフ型針が、軽やかに時を刻む。老舗メゾンらしい上品でクラシカルな外装に、3.25mm厚の薄型自動巻きが潜む。

ケースも8.7mm厚と極薄で、ゆえにモデル名はウルトラスリム。これほど薄いのにもかかわらず、100時間ものロングパワーリザーブが備わり、実用性は極めて高い。またシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、耐磁性にも優れる。外装、ムーブメントと、ともに高級時計製造の伝統に則った手仕上げが行き渡り、高い満足感が得られる。

径40mm。自動巻き。SSケース。1,298,000円。

【New: 新作】フィフティファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダー

新素材と古典顔に装った、元祖ダイバーズウォッチ。

ブルータス時計ブランド学 Vol.7 ブランパン

ケースとブレスレットは時計界では使用例が少ないグレード23チタン製。逆回転防止ベゼルのインサートはセラミック製で、目盛りはレーザー加工とリキッドメタルで施す。

最新の素材と技術を駆使する一方、ダイヤルに備わるコンプリートカレンダーは、日付は針で、月と曜日は2つの小窓で示し、ムーンフェイズの月には顔を描いた古典的なスタイルを踏襲。新旧を一つに交錯させたダイバーズウォッチは、最古の老舗らしい表現だといえよう。チタンの外装は比重が低く着け心地が軽快で、金属アレルギーもほとんど起こさない。防水性能は、300m。本格的なダイビングにも心強い。

径43mm。自動巻き。チタンケース。2,420,000円。

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