10月17日:コンセプト決め
朝霧重治
いつもコラボレーションをする時は、コンセプト的なアプローチや地域の農産物などからイメージを膨らませていくことが多いんです。なので、まずはサウナ後のビールに期待することから話していきましょうか。
濱田織人
サウナ後は喉も渇いているし、アルコール度数は控えめで、結構グッと飲める方が、体験としては楽しいのかな。何かシンボリックな香りがあったりする方が、思い出に残りそうですよね。
朝霧
サウナ後は体が火照っているので、爽快感も欲しい。濱田さんの言うシンボリックな香りを加えるのは、すごくいいなと。せっかくだからサウナに入る方が日常的に飲めるビールになってほしい。
田島朗
このビールを飲みたいから、サウナ行ってみようってアクションにまで結びつけたいですね。
橋本健太郎
例えば、飲むタイミングを、サウナー側に委ねるのも面白そうですね。極端な話、水風呂がないサウナが仮にあったとして、水風呂はないけどビールの旨い飲み方があると、そこに新しい価値も見つけられる気がします。
濱田
それ、すごくいいね。今その話を聞いて思ったのは、サウナがビールの調味料というコンセプト。
朝霧
いいですね。あとは、冷蔵庫から出してゆっくり飲んでみて、この温度もいいかもって発見するのも楽しいんじゃないですか。時間変化は面白いと思うし。
田島
サウナ後に少しずつ体が常温に戻ってくる時に、そこに寄り添ってくれるビールがあるといいですよね。ぬるくてもおいしいビールは、提案型ではあるのかも。
濱田
ビールが冷たくなくていいってのは、面白い提案ですね。
田島
ラフでいいじゃん、っていうのはいいかなと。いろんな人がサウナに行くようになると同時に独特のルールが生まれて行きづらくなる感じがあるけれど、水風呂もぬるくていいし、ビールだってぬるくていいんだよ、おいしければっていうところに帰着してくと、メッセージは作れるなって。
橋本
サウナにハマってくると、水風呂やセット数にとらわれがちで。今回の特集の取材でフィンランドに行ったらもっと自由だった。ビールに対してもそうですよね。それが一番おいしいと思うし。
濱田
優しいっていうのも嬉しいですね。僕、サウナ後って生ビール飲まないんですよ。喉越しとか、キレとか、強いのが馴染まなくて。
田島
確かにそうかも。体に染み渡る、スープみたいなビールとか?
濱田
いいっすね。スープ!
朝霧
キーワードは低アルコール、飲みやすい、染みる、優しい。その方向だと、苦味も控えめかなと。ちょっと次回の会議までに試飲できるビールを用意しておきますね。
10月24日:試飲&味決め
朝霧
今日は前回のブレストから案を持ってきました。共通しているのは口当たりが良く、飲みやすいこと。
セッションペールエールは、口当たりはすっきり、苦味を抑えて飲みやすく。スープ感が難しいですが、オーツ麦を使うことで、滑らかな口当たりを再現できるのかなと。セゾンスタイルは、ペッパー系のスパイシーさが一番の特徴。あとは、ユズ皮を使用したホワイトエール。これは、スープに近いイメージ。
ほかには濃色系のビターというスタイルも。セゾンとビターは、時間経過による香りの違いも楽しめる。最後はじっくり楽しんでもらうために、〈COEDO〉の原点のイモで考えたサツマイモとシトラス系のビールですね。これから、この5つを試してもらいますね。
(4人でビールを試飲)
田島
ビターはちびちび飲むという意味ではぴったりですけど、好き嫌いが分かれるかも。
朝霧
そこはちょっと心配です。
田島
一方で、キレのあるホワイトエールが染み渡ってきますね。
濱田
ちょっとスパイシー、何なんですかね?これ。
朝霧
ユズ皮ですね。〈COEDO〉はユズの経験値が豊かで、引き出し方などに知見があるんです。ちなみに、ホワイトエールとビターを混ぜてみても面白いかも。
田島
僕、ホワイトエールはあまり得意じゃないんですけど、合わせたこの感じはすごく好きですね。麦の深みを残しつつ、ビターの角が取れてユズもちゃんと感じる。
橋本
大きな方向性として、瞬発力を取るか、ととのいの延長にある世界観を取るかですね。セゾンやビターはインパクトが強かったから印象に残りそう。ほかはととのいの延長で、常温の世界観にハマる感じはします。
田島
サウナ後の多幸感っていうんですかね、ユーフォリアな感じが出てくればいい。ネーミングもそういう方向に向かっていくといいのかも。どことなくまろやかな感じなのかな。
橋本
サウナでほわんと包まれる感じの、ほわんの一部分にこのビールも入ってくるといいですね。
濱田
そう考えると、ホワイトエールとビターを混ぜたものが一番いいかも。温まってもおいしい。
朝霧
僕もいいと思いました。その方向で味を調整してみましょう。
11月1日:ネーミング決定&最終仕込み
田島
今日は、これまで話してきたコンセプトや味わいも踏まえて、ネーミングの最終決定をしたいと思っています。
朝霧
1回目の会議では、低アルコール、飲みやすい、染みる、優しい、ぬるくてもおいしい、スープみたいなビールというキーワードが出ましたね。それを踏まえた2回目の試飲では、ホワイトエールとビターのいいとこ取りをしつつ、ユズの爽やかさを加えた味わいという方向になりました。
濱田
COEDOさんだと、「瑠璃」や「毬花」みたいな、漢字2文字のネーミングも多いですよね。今回のコンセプトだと「深温」とかもいいのかも。心の中まで温めるというイメージも込めて。
田島
COEDOさんリスペクトの意味で、漢字もいいかもしれない。
橋本
実は、前回までを受けて個人的に案を考えてきたんです。ポルトガル語で乾杯と健康を意味する言葉の「SAÚDE(サウージ)」はどうかなと思っていて。語感的にサウナっぽさもある。
田島
乾杯と健康、サウナの「サウ」っていう音との被りなど、物語のてんこ盛りな感じがいいですね。サウナと関係ないネーミングにするなら、このくらいのビハインドストーリー感はいいかも。
朝霧
いいネーミングですね。漢字も捨てがたいです……。田島さんのおっしゃるように、ビハインドストーリー感を意識するなら、「SAÚDE」ですかね。BRUTUSとコラボするという意味でも。
田島
確かに、いいですね。
朝霧
そして、前回の試飲を受けて、こちらで味わいを決定しました。この後、仕込みが始まるので、ぜひ皆さんにホップとユズの投入をしてもらいたいなと。
田島
楽しみです。
(COEDOの工場へ移動)
朝霧
これが今回のビールの原料になるベースモルトです。食べてみてください。
濱田
サクサクして甘いですね。これだけでもおいしい!
朝霧
原料の時点でおいしくないと、どうやってもおいしいビールにはならない。今ちょうど二番麦汁が煮沸釜に入っています。せっかくなので飲んでみてください。
田島
この段階だと甘いですね。麦の香ばしい感じがすごい。
朝霧
煮沸釜に移動しましょうか。
橋本
これがビールになるのか〜。
朝霧
煮沸が終わったのでここにホップとユズを投入していきます。
(ホップとユズを皆で投入)
濱田
すごい熱気ですね。
朝霧
そうなんです。醸造の現場って極めてサウナに近く、暑くてスチーミーなんですよ(笑)。
橋本
夏場はサウナになりそう。しかし、ホップとユズを投入して情が湧きました。どんなビールが生まれるのか楽しみです。
濱田
できたビールで、早く皆で乾杯したいですね〜。
朝霧
このビールを飲む時間も含めて、楽しみにしてくれると嬉しいです。サウナ後の極上のリラックスになるといいなぁと……。
サウナ後にぴったりのオリジナルビールが誕生!
COEDO-BRUTUS
SAÚDE SESSION PALE ALE
コエドブルワリーお客様窓口
TEL:0570-018-777
ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。