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『ブルーピリオド展〜アートって才能か?〜』開催にあたり、山口つばさと藍にいなが初対面

藝大受験や学生ライフは実際どのようなもの?山口つばさと藍にいなが初対談。

photo: Kazuharu Igarashi / text: Hiroya Ishikawa

主人公の高校生、矢口八虎が、美術室で見た絵に心を奪われたことから東京藝大を目指す受験生に。予備校での奮闘や入学後の悲喜こもごもを描いた漫画が『ブルーピリオド』だ。マンガ大賞2020にも輝き、読むとなにかに挑戦したくなる胸アツなこの作品の展覧会『ブルーピリオド展〜アートって才能か?〜』が、天王洲の寺田倉庫G1ビルで開催中。

著者は、東京藝術大学(以下藝大)美術学部絵画科油画専攻の卒業生である山口つばささん。漫画で描かれている藝大受験や学生ライフは実際どのようなものなのだろうか?同じく同大同学部のデザイン科デザイン専攻卒業生で、YOASOBIの「夜に駆ける」のMVのクリエイターとしても知られる藍にいなさんとともに、当時を振り返りつつ、創作秘話などについても語り合った。

『ブルーピリオド』とは?

『ブルーピリオド』

不良グループとつるみながら、なんでもそつなくこなし、成績も優秀な高校生、矢口八虎が、美術室で偶然見た絵画をきっかけに東京藝大を目指して受験に挑む熱き青春漫画。

テレビアニメ化やNetflixでの全世界独占配信など漫画の域を超え国境も超えてファンを拡大中。

“ブルーピリオド展”の内容は、いかがでしたか?

藍にいな

『ブルーピリオド』のストーリーをそのまま体験している感覚になって、シンプルにめっちゃテンション上がりました!解説なしで純粋に作品を評価するなど、アートに詳しくなくても楽しめる点も素晴らしかったです。こういう展示は新しいですよね。

山口つばさ

ありがとうございます。

藍さんはどうして藝大のデザイン科を選んだのですか?

将来に保険をかける意味もあって、この学科を選びました。

山口

もし作家になれなくても唯一就職できる学科らしい、みたいな?

全然かっこよくないですね(笑)。

山口

そんなことないです!藝大は現役合格ですか?

2浪しました。現役で多摩美術大学(以下多摩美)に進み、仮面浪人をしていたんです。

受験対策はしていました?

過去問を解いていましたね。現役時代は予備校に通っていましたが、多摩美で教えてもらうデザインのことが藝大受験にも生かせるので、自主勉でいいかなって。山口先生が合格した油画専攻は特に正解がないじゃないですか。だから受験の合否に関して、教授の好みが強そうなイメージがあります。

山口

私は美術系の高校に通っていたのですが、その頃からそういう感じだったので、それで決まるのは仕方ないよねって思っていました。

現役受験の時はどんな感じでしたか?

現役の時は、予備校の教えで頭が凝り固まってしまったというか。こうしなきゃ、ああしなきゃみたいなものを抱えながら受験に臨み、結局藝大はダメでしたが、多摩美に入ったことでいろいろなことを学ぶことができました。その結果、シンプルに魅力的なものを描こうとか、好きなものをちゃんと出せばいいんだっていうマインドになれたことが良かったです。

山口

予備校に通うと、藝大の教授の人柄はどうとか、何点以上はこんな傾向らしいみたいな噂が耳に入りますよね。

そうなんです。だから現役の時は受験対策を意識したかのような作品が出来上がったりしていました。

山口

こんな要素を入れると合格しやすい、みたいな教えはありましたか?

こういう構図だと映えるみたいな。流行りの構図ってありますよね。多摩美で学んだことで、そういうノイズが取り払われたことが、結果としてはよかったのかなと思います。

油画専攻は変わり者が多い⁉

藝大生の学科や専攻によるキャラクターの違いについて教えてください。

山口

藝大のデザイン科ってリア充なイメージがあります。キラキラしていてコミュニケーション上手。逆に油画専攻は陰キャ。つなぎを着ていて汚れ仕事っぽいことが多いし、一人で描くので、学内では油画の人は変わってるよねーって思われている気がします。

そういうイメージはありますね。

山口

藍さんは学科のイメージそのままに今の活動も華やかですが、商業的に作品を作る際に、気をつけているのはどんなことですか?

仕事で人に伝わる作品を作るためには、その核に自分の個人的な感情を入れようと考えています。逆に表面的にこういうものが人に伝わるだろうとか、ウケるだろうと考えてしまうとどんどん空っぽになってしまって、結局なにも伝わらなくなってしまうんです。

山口

私は若干逆かもしれないです。どうしたら伝わるかな?みたいなことをめっちゃ考えちゃうから。でも完全に世間や流行りに迎合したものは性格的に作れない。それを作るなら自分じゃなくてもいいし、結果的にあまり良いものにならないから。自分が伝えたいことや大事にしている部分がどうしたら伝わるか?そこを最初に考えて、そのあとをどうしよう?という順番で作っています。

めっちゃわかりやすいです!

最後に、お2人が人生で大切にしているのは、どんなことですか?

山口

これまでの数十年の人生で大切だと思うことは、言葉は乱暴ですけど、ひまつぶしです。要は仕事もプライベートも含めて何に一番時間を使ったかってところが、その人の人生なんだと思います。私の場合は、漫画ですかね。

私は変化が大事だと思っていて、人生を歩むうえで漠然とゴールを決めていると思うんですけど、例えば、オリンピックで金メダルを獲るぞっていう目標があったとして、それを25歳で叶えても人生は続くじゃないですか。だから、そこで満足しないで変化し続けようって思うようにしています。

山口

今のお話だけで、藍さんがゴリゴリに努力家だってことが見えました。

ありがとうございます。自分はどこにいても別にいいし、変わり続ける限り、人生を歩んでいると思えるんです。

山口

めっちゃ熱いですね!

藍にいなさんが描く、独特の世界観にも注目したい

「夜に駆ける」のMVで一躍人気クリエイターとなった藍にいなさん。アニメーションや漫画、イラストレーションなど多彩な表現方法を駆使して、儚げでメランコリックな独自の世界を表現。MVの制作ではすべての作業を一人でこなしている。

(左)藍にいな、(右)山口つばさ
藍にいな(左)、山口つばさ(右)