社長!これからのブルーノートはどうなっていきますか?
「2024年1月のピアニストのイーサン・アイヴァーソンを皮切りに、2月はビブラフォン奏者のジョエル・ロス、3月がノラ・ジョーンズに、ギタリストのジュリアン・ラージ、そしてサックスの巨匠であるチャールス・ロイドも新作を発表。9月頃までのリリース日程が詰まっていて、もう大忙しだよ。レーベル史上、最高の年になるだろうね」
発掘音源で新たな形で蘇るソニー・ロリンズの名盤
過去のマスターテープを基に、新たにマスタリングを施して現代に蘇らせる「Blue Note Tone Poet」LPシリーズからは、ジャズの歴史が少し変わるような発掘作が登場。
「マスターテープを保管する倉庫があって、缶ケースに入ったリールが積み上がっているから“アイアンマウンテン”と呼ばれている。そこから、なんと1957年のソニー・ロリンズのライブ盤『A Night at the “Village Vanguard”』のオリジナルマスターである7.5ipsテープが見つかったんだ。レコーディングエンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーは録音会場のジャズクラブに小型で回転速度の遅い7.5ipsテープを持ち込んで録音。それを自身のスタジオで、通常の回転速度に転換してマスターを作った。
ルディ以外、元の7.5ipsテープを見たことがなかった。見つかったマスターのラベルには、創業者のアルフレッド・ライオンによる直筆でタイトルが書いてあった。それを現エンジニアのケヴィン・グレイが丹精込めて通常速度に戻し、リマスターしたんだ」
新世代のミュージシャンたちとレガシーをつなげることが、レーベルにとっての最重要課題だという。
「例えば、1960年代のハービー・ハンコックやウェイン・ショーターによる革新的な作品だって、ゼロからすべて生まれたわけではない。彼らは50年代のセロニアス・モンクやアート・ブレイキーの作品に学んだはずだ。本当のレガシーというものは、どの時代においても、その時の若いミュージシャンたちが、自分たちの前にいた先駆者たちの音楽から学び、血肉化するもの。新しい世代を育み、継承させるために、やはり古い音楽は必要なんだ」
耳と心をオープンにして、ライブで新しい音楽と出会う
王道から実験的作品まで。多くの録音作を発表しながらも「ジャズはライブが重要」と断言する。
「自分でもジャズクラブやライブハウスに足を運ぶんだ。最近はアメリカでも、とにかく若いリスナーが増えているね。ドミ&JD・ベックのライブなんか、ティーンエイジャーも多い。2人を聴き始めたキッカケは、アンダーソン・パークとの共演だったかもしれないけど、結果的にジャズに魅了されることは、すごく面白いことだね」
2024年は現社長独自の企画もある。「若いミュージシャンたちで結成したブルーノート・クインテットのツアーもある。全米35都市を回る中、半分はジャズクラブ、残りはロッククラブでのギグになる。ビギナーでも楽しめるツアーになると思う。日本にも連れていきたいね」