「太陽光を再現する」という京セラのLED照明「セラフィック」。独自開発のLEDチップによって、太陽光の中の紫外線と赤外線をのぞいた、可視光に含まれるすべての波長を再現したフルスペクトルLEDだ。自然光に非常に近い光を再現できるため、これまでに水族館や博物館、美術館などのほか、医療用にも使われる業務用ライトだったが、今回、動植物の育成ライトとして、そのコンシューマー版「セラフィック・いきもの電球」が新登場した。1灯数十万円するものもある専門的な照明機器が、基本技術はそのままに17,600円(税込)で手に入ってしまうというのだから、なかなかの事件である。
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育成灯としての実力については、時間をかけて今後いろいろ検証してみるとして、今回はその光で、さまざまな標本たちを照らしてみたい!と思いたった。標本を室内で眺めていると「これ、自然光で見るともっと綺麗なんだけどな」ということがしばしばあり(逆もあるけれど)、このライトを使えば標本の大敵である紫外線を気にすることなく、正しい色で標本類を鑑賞することができるんじゃないか?という期待が湧いたからだ。
ということで早速、「いきもの電球」で標本鑑賞会スタート!この電球には、朝日を想定した白色(4000K)、晴天の日の日中の光を想定した昼白色(5000K)、曇り空の光を想定した昼光色(6500K)の3タイプがあり、今回はちょうど真ん中の昼白色の電球を使ってみたいと思う。
まずは手始めに、ホワイトバランスのチェックも兼ねて、「地球上で最も白い生物」のひとつに数えられるマッシロコガネ(Cyphochilus insulanus)を照らしてみた。
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すごく素直な白。一般的なLEDは、青色LEDに黄色蛍光体を組み合わせて白色を作るものが多く、可視光の中で一番強い青が突出したまぶしい光であることが多かったが、セラフィックは紫色LEDとRGB蛍光体を組み合わせることにより、一つのチップでまんべんなくさまざま波長を出すことができるそう。波長グラフを見ても、セラフィックは青色だけが出っぱるのではなく、まんべんなく様々な色が出ている。そのせいなのか、とても自然で優しい光に感じる。
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続いて、ボウカルディプラチナコガネ(Chrysina boucardi)。光源によってかなり見え方が変わってしまう虫だが、メタリックな銅色からグリーンへのグラデーションの特徴的なニュアンスが自然な感じで見てとることができた。構造色の虫を見るのにとても向いていそうだ。
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ショーエンヘルホウセキゾウムシ(Eupholus schoenherri)も非常に美しい。そのものの美しさを照らし出してくれる感じで、構造色の奥行きみたいなものも感じさせてくれる。
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続いて鉱物からアクアマリン(Beryl var.Aquamarine)。こちらもこの標本らしい涼しげな青さが出ていて好印象。京セラはジュエリーを扱う部門も持っているので(意外っ!)、そういったところでの知見も活かされているのかもしれない。
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クォーツとアズライト/マラカイト(Quartz with Azurite,Malachite)の標本。クオーツの先端についたアズライトの少しギラついた感じなど、雰囲気がよく出ている。
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そして、植物は青光り系植物からホマロメナ“ユークレイス”(Homalomena sp.“Euclase”)を。これはメタリックな感じは出ているが、実際はもう少し青い反射が見える個体だった。この電球自体がスポット光として開発されているので、こうした薄暗い光で青光りする植物には光が強すぎるのかもしれない。
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ホヘンベルギアなどの比較的大きな植物も全体を美しく照らせて、充分によく育ちそうな光量があるため、育成灯としての本来の実力もとても高そう。これからのインドア栽培の心強い味方になってくれそうな予感がする。
という感じで、本来の目的とは少し違った脇道的な使い方である「いきもの電球」で標本を照らしてみるの巻。結果「とても自然な光」という印象でした。めちゃくちゃ映える、という感じではなく、素直で気持ちのいい見え方。今回、ほかの光源や太陽光などと比較したわけでもなく、またカメラとの相性などもあるため、あくまで画像は参考までに、という感じなので、ぜひ実際にお手持ちの標本を照らして見てほしい。
標本用だったり、そこまで強光が必要ない植物用に、広い面積を照らせるフラットパネルタイプも出てくれたらいいな、なんて期待も!