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2人の“ズレ”が生み出す、唯一無二の音楽。Bialystocksが明かす、その制作プロセス

テレビドラマ『きのう何食べた?』のシーズン2が始まった。そのエンディング曲「幸せのまわり道」は、今要注目のユニット、Bialystocksによるもの。「物悲しい雰囲気の中にささやかな幸せが感じられるような、ドラマの持つ温度感を大切にして曲を作りました」(甫木元)、「甫木元らしい日本的なメロディの良さは残しつつ、いい意味でドラマの邪魔にならず聴き流せるようなアレンジを心がけましたね」(菊池)。ドラマだけでなく、曲自体の余韻もずっと心に残る、Bialystocksの新たな名曲の誕生だ。

photo: Shinsaku Yasujima / styling: Kaze Matsueda (Edwina Hörl) / hair&make: Chiaki Saga / text: Mikado Koyanagi

相違点と共通点の幸せな融合

Bialystocksのどこか懐かしいような、それでいて先鋭的なサウンドは、どのようにして生まれるのだろう。住んでいるところも、音楽的なバックグラウンドも異なる甫木元と菊池は、お互いに曲やアイデアをキャッチボールしながら、一つの楽曲を完成させていくスタイルだ。それについて甫木元はこのように説明してくれた。

「そのままだと童謡とか合唱曲のようになってしまう僕の曲を、菊池が(アレンジで)毎回違うものにしてくれるんですよね。ルーツが違うから、どっちにしてもズレてはいるんですけど、ズレながらうまくいくといいなと思って。でも、2人とも音数が多いのがあまり好きではなくて、最終的に引き算するのが共通点かも」

Bialystocksの二人
Bialystocksの2人。(左)ボーカルの甫木元空、(右)キーボードの菊池剛。

菊池はジャズピアニストでもあるが、「(ジョージ・)ガーシュインが好きなんですが、ジャズアレンジされたものを聴くのもいいけど、やっぱり元のメロディのグッとくる良さというのもあって。ジャズは時にそれを台なしにしてしまう気がしたんですよね。それで、ちゃんと構築された音楽を作りたいと思うようになった」と語る。

そのようにして生まれるBialystocksの曲で、印象に残るのは、コーラス含め、甫木元の歌の響きが大きいかもしれない。それを甫木元は次のように言葉にする。

「菊池曲は、デモで菊池が英語で歌っているのが来るんですが、その音にハマる日本語を乗せないと、のぺっとしてしまうんですよ。この音を残したいというのを、歌詞の意味より優先させることが多いですね。自分の曲でもそうですが。もちろん、それだけだとサビには弱い時もあるから、その時はパズルのように言葉を探していきます」

最後に、2人が普段よく聴く音楽について尋ねると、甫木元は、音響系のフォークだと言う。その一方で、菊池は、「僕は6~7割、フランク・シナトラですね」ときっぱり語った。このどこかズレながら、絶妙にマッチする2人が生み出す音楽に、ますます目が、耳が離せなくなった。

Bialystocksの最新シングル。現在放映中のドラマ『きのう何食べた?season2』(テレビ東京)のエンディング曲。トランペットは甫木元の演奏。映画『幸せへのまわり道』と直接的な関係はないものの、甫木元は好きだとのこと。
Bialystocksの二人