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遠山正道と御手洗龍が構想。約10㎡の暖かな小屋をあなたの好きな場所に建築します

BRUTUS1000号「人生最高のお買いもの。」の目玉企画、クリエイターの夢の商品が揃うマーケットプレイス「あしたのベストバイマーケット」では、遠山さんのスタイルと御手洗さんの設計が買える!
週末山小屋暮らしの遠山正道さん。夏の間は涼しく、あとはほとんど寒い場所で、暖かく過ごすための小屋を造ろうと、建築家の御手洗龍さんに相談。林間に立ち、どの季節も快適をくれる理想の館はいかが。

photo: Nobuhiko Abe / text: Yoshio Suzuki / produce: Tomoko Haruta

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会社経営者、大学教授、ユーチューバー……多数の肩書を持つ遠山正道さんは週末を北軽井沢で過ごしている。土曜の朝の新幹線に乗り、バスに乗り、午前中には到着する。

遠山さんが所有するのは、1974年、詩人の谷川俊太郎の別荘として建築家の篠原一男が設計し、名建築と知られる通称〈Tanikawa House〉だ。2019年、ある偶然から遠山さんの所有が叶った。しかし今回の主役はそちらでなく、敷地内に計画している離れ〈暖居〉だ。その名の通り、暖かな居場所を造ろうと、気鋭の建築家、御手洗龍さんに相談することから始まった。

〈Tanikawa House〉外観
母屋にあたる〈Tanikawa House〉。1974年竣工。谷川は設計の要望を一編の詩に託し、篠原はそれに応えた。「冬の家」「夏の空間」という2つの要素を持つ建物。

──図面や完成CGはあり、間もなく着工、2024年の2月には完成ですね。

遠山正道

建築は楽しいです。最初は僕としては巻き貝みたいな建物をイメージしてたんです。御手洗さんの螺旋階段を使った建物を知ってて。

御手洗龍

とても寒い土地なので暖をとる小屋が欲しい、狭い中をかいくぐって入っていくようなっていうリクエストをいただいたのですが、根を切らずに木と木の間に建物を建てるのが案外難しかったんです。

遠山

木を伐(き)るのはしたくないのでツリーハウス式にすることにしました。最初は3本の木の間に造ることを考えたりもしましたが、それでは狭すぎるので4本に持たせることに。

御手洗

木の根が深くて、建てられる場所があまりないし、コンクリートを打つのも森に良くないとなり、良い解決になりました。そして、こっちの景色もいいし、反対側の木漏れ日も最高だし、全方向に開いてるのがいいんじゃないかと案が進んでいきました。

遠山

4つの窓があって、僕は簡単に、谷の窓、山の窓、籠もりの窓、木漏れ日の窓と呼んでいて、それぞれが出窓みたいになってる。

御手洗

いろんな使い方をしたい、サウナにも使いたいと。高さの違う出窓空間を上に上がっていくにつれ、体感温度も上がっていきます。

遠山

日がな一日暖かい部屋なんだけど、夜ももったいない、ここで飲みたいって思って、じゃあ電灯も付けてとか、夢が膨らんでいきました。

御手洗

家を造る時は、熱負荷を抑えるためにできるだけ上からの直射日光が入らないようにと考えるんです。でも今回は暑くしようと大きな天窓もある。反対をやる。サウナとして使うと中に持ち込めないものも出てきて、外の棚に置いておく。普通は家の中に大事なものをしまっておくわけで、それもまた反対になっています。いろいろと考えが反転していて面白いものができました。

遠山

とにかく暑くなって構わない家。西日もすごくいいんです。設計をお願いするにあたって「気になるポイント」というのを書き出して渡したんですよね。こんな感じ。

(1)背中を寄せられる壁を1ヵ所は造ってほしい。ないと落ち着かない
(2)YouTubeなどの撮影ができるカメラ用の引きが必要。
(3)薪ストーブの前でYouTubeの編集などができるテーブルがいる。
(4)外に棚が欲しい。サウナ使用の時にものを入れる。
(5)木漏れ日の入る窓が大事。
(6)サウナの時用のスノコ壁。

超個性的な設計の建築だが別の場所にあってもいい

御手洗

このように木の合間から4つの窓が飛び出す形となりました。木漏れ日の窓辺、籠もりの窓辺で座ったり寝転がったりでき、高いところに行くとだんだん暑くなっていく。

遠山

意外に狭い?意外に広い?

御手洗

6畳ほどのスペースですが凸凹があるので、広く感じるかもしれませんね。

遠山

手すりからつながる鉄棒みたいなのも楽しみ。トレーナーに肩とアキレス腱が硬いって言われて、肩のストレッチをやってるんだけど、鉄棒にぶら下がるのが気持ちいい。

ただただ暖かく、快適な居場所のための4つの窓

──さて、この建築ですが、今回、数を決めて、販売する計画が立ち上がりました。

御手洗

驚きましたけど、面白そうですね。別の場所に建った時に周辺も少し変わって見える。ある土地に根ざした固有のものが違う場所に存在するのは面白い。

遠山

そもそもは窓の位置もそこにあった木を避けるように決めていて、サイトスペシフィック的なのだけど、木のないところに建てたら、なんでこんな形なの?ってなるよね。実は木に支配された設計でしたって。

どこに建てるにしてもできれば方位は合わせたいな。そうすると西日が入ってくる体験は共有できる。美術で言えば版画のようなエディションものって、掛けられた場所は違いながら、それを見る体験は共有できてるみたいなんですよね。

実業家・遠山正道、建築家・御手洗龍
左/遠山正道、右/御手洗龍。 母屋から徒歩1分の〈暖居〉建設予定地。着工前の記念の一枚。夏は葉が繁って、この建物、ほとんど木に隠れるのだろうか。

〈暖居〉建築権&設計費(施工費別途)

ショップ名:〈暖居〉official store
価格:¥1,320,000
異なる外景を楽しめる4つの窓辺とサウナストーブを備えた約10m2の木造建築〈暖居〉。遠山正道さんと御手洗龍さんが生み出したこの新種の建築を、あなたの好きな場所に。参考施工価格約1,000万円(基礎、外構別途)。建設予定地の状況等により購入できない場合あり。詳細はショップサイト参照。

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