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山梨の伝統、花火と水晶を引き継ぐ名匠2人。「花火大会のテイクアウト」を販売します

もしも自分だけの花火を打ち上げることができたら?そんな夢を叶えてくれるのが、「あしたのベストバイマーケット」で販売中の「花火大会のテイクアウト in 山梨」。山梨県で花火の製造販売から企画演出までを手掛ける〈マルゴー〉と、同じく山梨県の伝統技術を現代的に再解釈した水晶作品をつくる〈詫間宝石彫刻〉。両者がタッグを組み、世界にひとつの持ち帰ることができる花火大会を開催してくれます。

text: Neo Iida / produce: Tomoko Haruta

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花火も水晶も、ともに山梨県の伝統産業。市川三郷町で行われる「神明の花火大会」は江戸時代に日本三大花火と謳われ、多くの花火師が誕生した。また、甲府の昇仙峡は国産水晶発祥の地であり、研磨や加工技術が発展したことでも有名だ。

全国花火競技大会で最優秀賞を受賞した花火会社〈マルゴー〉の齊木智さんと、甲州水晶貴石細工を手掛ける工房〈詫間宝石彫刻〉の詫間康二さん。山梨で先人の技術を受け継ぐ二人が、「あしたのベストバイマーケット」に参加する。両者の仕事、そして販売する“花火大会のテイクアウト”について話を聞いた。

詫間康二

僕たち地元の人間は、毎年夏になると「神明の花火」に行くんです。それくらい地域に馴染みのある大きなお祭りで、山梨県内はもちろん東京からもたくさんの人がやってきます。

今回、この『BRUTUS』さんの企画で初めて顔を合わせましたけれど、打ち上げを担当されているマルゴーさんのことは、もちろん存じ上げておりました。

齊木智

ありがとうございます。

詫間

真上にものすごく大きな花火が上がって、大迫力ですよね。色もすごく綺麗で。

岩手三陸花火大会の花火
全国各地の花火大会で大輪の花を打ち上げる〈マルゴー〉。写真は2023年に行われた「岩手三陸花火大会」の様子。(撮影:菅野斗施雄)

齊木

うちの花火は濃さ、明るさ、艶やかさが自慢で、色を使って変化や動きを見せるのが特色なんです。よく「マルゴーさんの花火は個性があって面白いね」と言っていただくことがあるんですが、それは担当者の独創性に任せているからだと思います。

依頼主の要望を押さえつつ、安全面に気をつけさえすれば、存分にアイデアを活かしてほしいなと。コロナ禍で一時期は花火を見ていただく機会も減りましたが、去年から少しずつもとに戻ってきた感じです。

詫間

やっぱり山梨は花火の街ですからね。

齊木

ええ。遡ると花火の起源は「狼煙(のろし)」に繋がりますが、山梨だと戦国時代に武田信玄が情報伝達のために使った狼煙が有名です。

湖や河川にも恵まれた土地ですから和紙づくりが盛んで、紙が豊富にあったので尺玉を制作するのにも適していました。広大な土地もあって打ち上げ場所にも困らず、花火を作るための環境が古くから整っていた地域なんです。

詫間

今回のように、個人で花火を上げることもあるんですか?

齊木

ありますよ。プロポーズとか、ご家族の誕生日、結婚記念日。あとは会社の周年イベントとか。花火って遠いもの、簡単にできないものだと思われがちですが、場所とやり方によっては個人でも上げられる。

それを今回の「ベストバイ」を通じて知ってもらえたらと思っています。特に今回は、同じ山梨で活動する詫間さんとコラボレーションできるのが嬉しいです。

詫間

僕も光栄です。山梨は360度をぐるっと山に囲まれているので、地下に豊富で良質な水源があります。その熱水はプレートの隆起によって地上に押し出されるなかで冷え、長い時間をかけて水晶になっていく。

僕たちの手元にある石は、1500万年以上も前の古い地層が押し上げられたものなんです。水晶の取引は縄文時代からあったそうですが、約300年前からここ山梨などで伝統工芸が発展し、〈詫間宝石彫刻〉は僕で2代目になります。

齊木

詫間さんが作ったグラスを拝見しましたが、すごく美しいですね。中に線が入っていて。

針水晶のショットグラス
繊維のような結晶が煌めく、詫間さんが作った針水晶のショットグラス。「花火大会のテイクアウト」では、購入者のために新たな針水晶作品を制作してくれる。

詫間

齊木さんにご覧いただいたショットグラスは針水晶という天然のチタンを内包した石で、中に針状の結晶が見えているものです。この独特な線の形が花火のイメージに近いかなと思って、「ベストバイ」もこの素材を使ってご用意します。

齊木

ご自身で石を探しに行かれるんですよね。

詫間

はい。山梨に限らず、世界各地にある原石の集積所に買い付けに行き、作品づくりを行っています。地域によってインクルージョンと呼ばれる内包物が異なるので、表情は様々。

いろんな水晶を見ているうちに「これはブラジルの石」「これはマダガスカルの石」と見分けられるようにもなってくる。そういった制作の過程を発表する場として、作品を「アートフェア東京」で発表しています。

齊木

とても美しいなと思いました。今回の「ベストバイ」では、私たちマルゴーはお客さまにヒアリングをして「どんな形にするか、色をどうするか、音楽を使うか使わないか」といったプランを考え、一生の宝ものを作りたいと思っています。

心に残る花火を打ち上げるので、形として残るものは詫間さんの水晶に託せたら嬉しいですね。

詫間

そうですね。このプロジェクトを、山梨にゆかりのあるメンバーで進められるのもいいなあと思っていて。山梨って、すごく小さい町じゃないですか。人口は80万人くらいで、県内の30%程度しか住めるところがない。だからそのぶん、人と人が近いなと感じるんです。

齊木

小さいぶん密な気がしますね。

詫間

それに、実は東京からの距離は群馬よりも近いくらいなんですよね。でも山をくぐって景色が変わるせいか、ものすごく遠くに来た気持ちになる。それもあって東京の人もしょっちゅう遊びに来るんだと思います。

齊木

打ち上げも山梨で行うので、自然を楽しんで、おいしいものを食べて、山梨を堪能してほしいですね。そして最高の花火を体験してもらって、記念の水晶をお持ち帰りいただきたいなと思っています。

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