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建築家クマタイチが提案する、「動かせる」木造住宅。夢の移動式住居〈MOKU-AMI〉が実現するまで

美しい景色を目の前にしたとき、ここに住みたいと思ったことはありませんか?建築家・クマタイチさんが本誌1000号記念企画「あしたのベストバイマーケット」で販売するのは、そんな夢を叶えてくれる移動式の木造住居〈MOKU-AMI〉。夢の話をどう現実に落とし込んでいったのか、実現までの道筋を木造制作を担う〈シェルター〉の佐藤公紀さんとともに伺いました。

text: Tomoko Yasuoka

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目指したのは劇的に生活スタイルを変えるプロダクト

クマタイチ

あしたのベストバイマーケット」のお話をいただいたとき、すでに世の中に出回っているプロダクトをちょっと良くするくらいじゃおもしろくないなって思ったんです。生活スタイルや価値観を根本から変えてしまうものがつくれないかと考えました。

そこで出てきたのが、移動できる木造住居〈MOKU-AMI〉の構想。家や建築物を土地という縛りから解き放ち、場所にとらわれず好きなところに住む。そんな新しいライフスタイルが提案できるんじゃないかと。

木にこだわったのは、素材としてとても魅力的だったからです。どんな場所に置かれても溶け込みますし、丈夫で温かみもある。また構造体となる木の柱に板をはめ込めば、デスクや棚など家具の脚として活用できる。この複雑な建築を木造で、いっしょに楽しみながら実現してくれるのは〈シェルター〉さんしかいないと思い、お声がけしました。

佐藤公紀

お話を聞いたとき、すごくおもしろいなと思いました。ただ、移動するとなると建築や施工だけでなく車両としての法規も考慮する必要があって、難しいことも多いなとも……。

クマ

そうなんです。我々だけではわからないことがたくさんあって。そこで、トレーラー部分の施工は、〈クロコアートファクトリー〉の徳田吉泰さんにお願いすることにしました。

クロコさんは、「Roomette」などのオリジナルのトレーラー制作を多く手がけているだけでなく、機械で吊り下げることなくシャーシからボディを外せるオリジナルのジャッキスタンドなども作られているんです。

この機構があったからこそ、運んで設置してまた運ぶという〈MOKU-AMI〉のコンセプトが実現できたと言っても過言ではありません。徳田さんのサポートがなければ構想段階で頓挫していましたね(笑)。

試作は100を超え……頭を悩ませた網目の構造

クマ

木を網目状に組んで構造体にする、というのは構想段階からなんとなく考えていたのですが、なかなか形状が決まらず……。100個くらいモデリングしたんですよね。電車や飛行機の中でずっと頭を動かし続けました。

​​完成形を見ると真ん中を少しねじっただけではあるのですが、有機的な屋根勾配の下に、3つの空間が生まれました。均一化されたひとつの箱ではないところが気に入ってます。

佐藤

最終のデザインは、正直我々の想像を超えていました(笑)。どうやってつくろうかなと、今わくわくしながら思案しています!

クマ

イメージ図では、真ん中を半透明の膜で覆っているのですが、膜を取り付けずに屋外として中庭にしてもらってもいいですし、柱を活用してベンチや棚といった家具を設置することもできます。購入者さんと一緒に空間を活用するオプションを考えられたらいいなと思っています。

例えば、潮風の当たる海辺だとコンクリートの建物が多いのですが、ちょっとの滞在ならこの〈MOKU-AMI〉を移動させてきて、木の温もりを感じることができますよね。あるいは、街から離れた場所で美しい星空を眺めながらベッドで眠る体験をしてもらったり。

そんなふうに〈MOKU-AMI〉と新しいライフスタイルを築いてもらえるのをとても楽しみにしています。

移動可能な木造住居〈MOKU-AMI〉制作相談費

ショップ名:〈MOKU-AMI〉
価格:30,000円

HP:https://mokuami.base.ec/

「MOKU-AMI」は置かれる環境の自然を取り込む移動可能な木造住居。ネット状の木の架構の中に広がる、膜で覆われた明るいリビングスペース、ミニマルなシャワーとトイレ、カップルも泊まれるベッドのワンルーム。トレーラーは公道を走りやすいサイズに抑えられているため、移動もさせやすく、トレーラーから外して設置することもできる。木は三次元加工されたやわらかな曲面で構成されているため、14㎡弱と限られた面積でありながら、温かみと落ち着きのある空間。

※移動の際には牽引免許や保険加入が必要となるので、まずはご相談ください。
※制作費としては最低1100万円(税別)〜。オプションや移動費用によっても価格は変動いたします。

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