「実は去年の春には完成してたんですけど、バラして作り直したんです。当初できていたのは、私のムードを詰め込んで、アーティスティックにまとめた一枚。メジャー2枚目だし、歌モノもウケるかなとポップな楽曲も入れて。でも(BAD HOPの)YZERRと話したときに、“ちゃんとヒップホップしてください。みんなAwichさんがラップで男たちをかますのを見たいんです”と言われて、マジ?見たいんだ?って。それで覚悟を決めて」
当初のアルバムタイトルは『KAZAANA』。「ヒップホップの世界に風穴を開ける」という強い気持ちを込めたが、自らの立ち位置を明言した言葉ではなかった。
「それまで“クイーンなんて言えない”って思ってた。大きなことをしたい半面、叩かれたくない、恥かきたくない、って。でもだんだん“これは私がやることなんだ”と思えるようになりました。特に去年のツアーでは、コロナ禍でもライブミュージックを体感してもらうために、私は私のやり方でライブを続けようと思った。ガイドラインをガチガチに設けて、チームと連携して。王国を作るからには、責任もとる。みんなクイーンはすごいって言ってくれるけど、内心は“仕事、デカッ!”みたいな(笑)」
女王は女性としての発言を求められがちだが、眼差しはあらゆる者へと向けられている。
「『口に出して』は、女性が性的な主張をしてもいいじゃんって曲。それがタブーとされる社会は古いし、欲しいものを欲しいと言う選択肢は誰にでもある。男にも負けないし、ていうか男とか女とかまだ言ってんの?って。私はみんなのことを考えてるし、その居場所を確保するのがクイーンだと思うから」
3月には初の武道館公演を控えている。
「田舎者で、子持ちで、夫を亡くしていて。でも武道館まで来られた。頑張れば、覚悟を決めればなんでもできる。勇姿ってほどじゃないけど、色んな人に見てほしいです」
