AUGER presents かっこいい大人は、“整え方”を知っている。Vol.17 ドラムボーカリスト、シシド・カフカ

“身だしなみ”という分野で、「毎日の当たり前の時間」を豊かにしてきた〈AUGER〉。その価値観を共有するクリエイターに、おのおののフィールドで“大人の整え方”を聞いてきた『BRUTUS』の短期連載が第4章へ突入。新章では、〈AUGER〉のように、心に触れて“整える”時間を演出する音楽家を取材。ドラムボーカリストとして活躍するシシド・カフカさんには、髪形や服装、ドラムのセッティングなどすべてに自分らしさを整える哲学があった。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / styling: Narumi Oki / hair&make: Aya Iwasawa / text: Keiichiro Miyata

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感情を乗せる“間”に浸れる演奏こそ、人に届く

「“整える”といえば、身の回りの整理整頓は欠かしません。あと、就寝や起床といった生活の基礎から、朝に植物の水やりをして、それから仕事やプライベートのことまで、割と一日の予定を組んで動くタイプです。そう聞くと、きっちりした性格と感じられるかもしれませんが、こだわりはゼロか、100かのタイプで、どうでもいいことはそっちのけ。気になることはとことんやる性格で、例えば、衣装とヘアはほぼ真っ黒。その見た目に由来する“カフカ”は、チェコ語でカラスを表す言葉で、私自身を象徴するキーカラーとしてデビュー当時から変わっていません」

身に纏(まと)う色だけでなく、特徴的な髪形一つにしても、すべては自分らしいステージングのために貫いてきたことだという。

「ライブは、演奏のクオリティだけでなく、ステージ上の立ち姿が観客からどう見えるかにも強いこだわりがあります。長い髪は、ドラムを叩く姿がより躍動して見えるよう意識してのこと。後方の客席からも演奏する姿がよく見えるようにドラムセットはやや低く設定し、シンバルはできるだけ体から離すことで動きを大きく見せることができます」

ほかにもシンバルの数や角度、メイクは直線的なアイラインで赤いリップを塗るなどシシド・カフカらしさを作り上げるものはたくさんある。

いつでも冷静かつ情熱的に、叩き、歌う!

ただ昔に比べれば、これでも自ら課した「◯◯でなきゃ、シシド・カフカじゃない」という呪縛からはある程度解放されているという。

「きっかけは、俳優やモデルにも取り組み始めたこと。音楽以外のことにも足を踏み入れてみると、それは積み上げてきた“シシド・カフカ像”を引き剥がされるような出来事で、結果として裸の自分をさらせて楽になりました。それからは、“できないのが当たり前”と開き直り、“何でも来い”という気持ちで何事にも挑戦できるようになりました」

そして音楽の分野でも表現の幅を広げ、自身が主宰するリズムプロジェクト〈el tempo〉では、コンダクターを務めている。

「〈el tempo〉では、アルゼンチンの作曲家、サンティアゴ・バスケス発案の“100種類以上のハンドサイン”を駆使し、即興でアンサンブルを奏でる実験的な音楽に取り組んでいます。その演奏は、普段のレコーディングとはまるで違います。

一つ一つの音を見つめ、その響きがどうか、和音がどうかを緻密に突き詰める曲作りとは異なり、予期せぬことも音楽に還元し、稀に奇跡が起こるライブの醍醐味を楽しむことができます。発案者のサンティアゴは、これを“空間をクリエイトするもの”と称していて、音楽の目的や整え方が一つでないことを学びました」

ライブとレコーディングを比較しただけでも違いは明らかな“整った音楽”の世界。個人的な好みもあるようで、「やり遂げた後のビールがより旨いのはライブ!」とシシドさんは語る。

「演奏して楽しい、観る人も楽しいライブが私は好き。歌い手として、理想は冷静かつ情熱的であること。具体的には、音符を追って冷静に演奏しながら感情を乗せる“間”に浸れると、いわばゾーンに達した状態。それが、“楽しい”“泣ける”、もしかしたら“嫌い”とか、聴き手の感情を乗せられるものになっていたら嬉しいです。時々、“ライブはどう楽しむのが正解なの?”と聞かれることがあるけど、それには“好きにしたらいいよ”と答えています。席にじっと座って鑑賞するか、手拍子するか、ビール片手に体を揺らすか、音楽でどう整うかは自分で決める。これが私なりの答えです」

MY STYLE “シシド・カフカ”から解放してくれるのが植物

「挑戦している姿から、怖いもの知らずと思われることがありますが、割と二の足を踏むタイプです」というシシドさんは、自らに鞭打つためにあえて思いを公言し、逃げ道を断つことでさまざまな道を切り開いてきたそう。

そのやり方も諸刃の剣で、「“これをやらなきゃ”という意識が強すぎると、見るべきものが見えなくなることがあります。ただ植物に水やりをして愛(め)でる時間だけは、自分への意識を逸らしてくれる」という方法で心をリセットしている。

シシド・カフカの育てる植物
家の中で過ごす時間の長い、リビングと書斎は植物がずらり。2025年に迎えた2種は、斑(ふ)入りのモンステラ(右)とセンナ・メリディオナリス(左)。ほかにもさまざまな品種を育てている。

WHAT’S AUGER?→《マルチユーズブラシ》


アイラインはボカさずにしっかりと引き、目元を印象的に仕上げるシシドさんにおすすめしたいのが、用途の異なる3種のメイクアップブラシがセットになった《マルチユーズブラシ》。ハンドルの底部分を引き下げるとブラシを収納できるスライドキャップ構造で、専用ポーチ付きなので、携帯にも便利。ブラシヘッドだけの交換も可能。

マルチユーズブラシ
1,980円(貝印)

PLAYLIST with AUGER 落ち着き、ウキウキもする異国のサウンド

「歌詞なしか、言語を理解できない異国の曲は、自分なりの解釈を広げられて好き」という視点で選曲。スペインの伝統打楽器、チャラパルタ奏者のデュオ、オレカTXが北極で収録した「Lakuko Lotura」は、幻想的な時間に浸れる。

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