自分らしく歌うために、精神的に薄着に衣替え
「高校卒業後に上京し、19歳でデビューして10年が経ちました。自分の心を整えるために、ちょうど今年から始めたことがあります。というのも、“好きなものを好きなまま、楽しくやり続けたい”という思いで取り組んできた音楽活動ですが、去年は不調を抱えてライブ活動をお休みする期間を取っていたんです。この経験があらゆることを見つめ直す大きな転機になりました」
休んでいる期間は不安や心配と同じくらい前向きな収穫もあったそう。
「昔は、鎧(よろい)のように自分の理想像を纏(まと)っていて、例えば、もっと人を感動させなければならないとか、このキーで歌わないとダメとか、この曲は絶対にセットリストに入れなきゃいけないとか、縛りだらけ。長年積み上げてきた思いに心が押しつぶされてしまって。これを機に、もっと感覚的でいようと決めて、“今が楽しい”ことや、その気持ちとシンプルに向き合うようになりました」
そんな心の状態を、藤原さんは「心の衣替え」と表現するように、復帰してからは、こう見られたい、こう振る舞いたいという心の鎧を脱ぎ捨て、「私が楽しむ現場をたまたまお客さんが目撃している」という気持ちでライブに臨んでいる。
私とお客さんが輪になれる音楽を届けたい
「心の衣替え」は、考え方一つですべてが一変したわけではない。ステージに立つ前には、心を落ち着ける新しいルーティンがある。
「今もライブ前は緊張感が少なからずあります。ただ、その感情を掻(か)き消すのではなく、“眺める”。その眺めている状態を落ち着いて過ごせるように、数ヵ月前からフラワーエッセンスを取り入れています。使い方は、ライブ直前に口にしたり、前夜の湯船に入れたり。これを試して臨んだライブがいい感じで、また次もうまくいって、と成功体験を重ねてお守りのような存在になっています。効果・効能を頼りにしているというよりは、使うことでスーッと落ち着く感じ。そんなふうに心を整えてくれます」
近頃は、曲作りにおいても変化があったようで、頭を空っぽにすることから音楽制作は始まるそう。
「曲のアイデアは、日常のふとした瞬間に“あっ、これいい”と突如メロディが浮かんできます。多くは、ただボーッとして頭が空っぽの時。だから意識的にスマホを遮断する時間を取るようにしています。好きなのは、山梨の湖の周りをサイクリングすること。そうやって物理的にスマホを見られない状況を作ったりもします」
最近はジャズやワールドミュージック、サルサ、その前はヒップホップと時代ごとに曲調が異なるのが藤原さんのスタイルだ。
「やりたいことが次から次に変わるタイプなので、一つのジャンルに特化するよりも、移り変わる自分の気持ちに正直でありたいんです。そうやって自分と素直に向き合ってきたから過去の曲を聴くと、当時の辛いこと、青い時代が蘇るし、その時の自分だからできた曲だなと、我が子を見る親のようにとても愛おしく感じます。現在制作中のアルバムは、譬(たと)えるならトロピカルで呑気なアイランド系。聴く人がスーッと楽になる曲を目指しています」
完成した曲は、来年2月に開催される自身初の日本武道館ライブで、届けられるよう準備しているという。
「歌うため、それを聴くために同じ場に集まるのって、改めてすごいことだと思うんです。もう、楽しむ以外の雑念を捨てて一体になるほかない。みんな一つになる調和が取れてこそ、整った曲になる。そんなふうに今は思います」
MY STYLE 持っているだけで安心でき心が落ち着く“お守り”
ライブの時に2、3滴ほど口にするというフラワーエッセンスは、「もはや持っているだけで安心できる」と話すように、焦りや緊張など本番前のざわつく気持ちを落ち着かせてくれる藤原さんの必需品。
「試してみたらライブがうまくいったので、その験担ぎを続けている、という感じ。本来の植物療法としてのアプローチとは異なるかもしれません。目に見えない漠然としたものに助けられる感覚は、人の心を動かす音楽とよく似ているのかも」

WHAT’S AUGER?→《ツメキリ Leaf》
ギターを弾くため、ネイルケアは必須。「弦を押さえる左手は短く、弦を弾く右手はやや長く整えるので、使いやすい爪切りを探しています」という藤原さんには、シャープな切れ味のステンレス刃物鋼《ツメキリ Leaf》がおすすめ。厚さは約3.9㎜とコンパクトに収まる世界最薄級の設計で、各地を巡るツアーの際にも活躍。爪ヤスリも内蔵。

PLAYLIST with AUGER 「よし頑張ろう」と心と体にスイッチを入れてくれる曲
ギャビ・アルトマンのアコースティックなサウンドからシルバナ・エストラーダのラテン音楽まで、藤原さんの気分がアガる全10曲。「曲順は私なりの流れ。ポール・マッカートニーの『New』を聴くと、“新しい自分”になれる」