アート作品のために、生活の基礎から整える
「私はどちらかと言えば、黙々と作業する職人タイプだと思います。どんなに多忙でもドローイングに向き合えるよう、スケジュール管理は徹底しています。まず起床は毎朝9時。すぐ作業に取りかかれるよう、自宅のそばにアトリエを構え、正午までは自主制作の時間と決めて、1日1枚の絵を描くことを自らに課しています」
完成させる作品は年間365枚以上。ドローイングを行うこと自体が、生活のリズムと心を整える、良きルーティンになっているそう。
完璧は求めず、納得できることに取り組む
「自主制作は土日も続けているルーティンです。休みなしでも全く苦はありません。むしろドローイングは最も心が落ち着く瞬間で、それを朝に行うことで、規則正しい生活を送る基本となっています。そうやって、自主制作に集中できる時間をしっかりと確保できているから、午後からと決めているクライアントワークや事務作業にも心置きなく没頭できる。しっかりとメリハリをつけてダラダラ作業しないのは、公務員だった親譲りの性格なのかもしれません。
そもそもアートって、いつの時代も、常に“暫定的”なものだと思うんです。完成させたつもりでも、明日や1年後、また10年後にそう思えるかは定かじゃない。当然、時間が経てば、自分の価値観は変わるし、世の中だって変わる。だから、どこで折り合いをつけて、いつ作業を手放すかは自ら決めるしかないと考え、毎日正午をそのリミットに設定しています」
見たものすべてが自分の糧となり、作品に映し出される
「こういった作業スタイルに至ったのは、10代の頃に観た日本のアニメや漫画が大いに関係しています。例えば、『攻殻機動隊』や『AKIRA』、あと宮崎駿監督作品はストーリーから作画まですべてが緻密で繊細ですよね。まさしく日本人らしい職人気質を象徴するコンテンツだと思います。これに匹敵するインパクトを自らの作品でも残すためにすべての努力を惜しまずにやろうと決めて、地道にこつこつとやっていく今のルーティンに行き着きました」
日々のドローイングと同じか、それ以上に、情報のインプットにも時間を割くそう。
「インスタグラムやピンタレストで見かけたデジタル情報を無作為に拾い上げてコラージュする私の作風は、食べたものが血となり肉となるのと同じように、見たものが自らの感性を育み作品に映し出されます。昨年手がけた作品に神話的な図像や宗教画、あとは『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』や『関心領域』といった映画のモチーフがコラージュされているのは、まさに私が直近に影響を受けたもの。自分が興味を惹かれるものに出会うため、絶えず、世間に“ワッツアップ?”と問う姿勢で、前向きにさまざまな情報に触れています」
そんなオープンマインドのノ・サンホさんも、あえて距離を置いているものがある。
「ただ避けているのは、偏った思想になること。そのために、暴力的なもの、非倫理的なものは作品のエッセンスとしてピックアップしないように意識しています。あと、私や私の作品に対してネガティブな意見も遮断しています。それは、SNSやインターネットに限った話ではありません。同業種が集まると、意見が白熱して否定的な話題が飛び交うことがあるので、ご飯や飲みに行くのは、他業種の方と決めています。小さなことに聞こえるかもしれませんが、自分のスタイルを貫くうえでは、プライベートの管理も大事なことだと感じています」
MY STYLE 作業の合間に、撫でて、聴いて、心を落ち着かせる
「作業の邪魔になることや無駄は省きたい」というノ・サンホさんのアトリエは、作業台から手の届くところに必要なものはすべて集約されているそう。稀に、作業が行き詰まることがあるそうで、そんな時はオルゴールを手にするという。
「古くなって半音ズレているんですが、そんな音色も私には心地よくて、オルゴールを聴きながらリングの目玉を触っていると、不思議とアイデアが浮かんできます」。打ち合わせ中も机の下でこっそり目玉を撫でていることがあるそう。

WHAT’S AUGER?→《ネイルファイル》
指先の繊細さが求められるアーティストのノ・サンホさんには、手に馴染み、操作しやすい《ネイルファイル》がおすすめ。爪の形を整える粗い面と、滑らかに仕上げる細かい面を備えた2WAY仕様。爪を手入れしやすいよう角度がついた立体構造で、ネイルケア初心者でも使いやすい設計になっている。
