会社の未来を導くフラッグは、 社員みんなで考える。
昨年、渋谷ソラスタに本社を移転した東急不動産。新本社ビルでは植物やIoT、フィットネス器具などを取り入れて「働き方改革の見える化」を目指したオフィス設計が注目を集めている。そんな中、実際に働く人々の生産性を向上させ、コミュニケーションを円滑に進めるためのプロジェクトが熱気をおびてきた。
「新本社への移転プロジェクトを進めるうえで、オフィス空間だけでなく、社員一人一人がチャレンジできる風土をつくりたいと思って、昨年の5月に〈GREEN FLAG PROJECT(GFP)〉が発足させました」(総務部、袖山義人グループリーダー)
コーポレートカラーであるグリーンのフラッグを掲げて目指すのは、事業部を超えたコミュニケーションの活性化や、社内マニュアルの一本化、メンター制度の導入、ワークライフバランスの実現による、東急不動産としての働き方改革だ。それぞれのプロジェクトは人事部主導ではなく、職種も年齢も異なる社員が有志で集まり、ヒアリングやディスカッションを重ねながら進められている。
若手社員の自発的な行動が、 組織全体を活気づける。
「会社の制度がもっとこうなればいいのに。そういう声があがると、じゃあ、一緒に変えませんか? と、プロジェクトがスタートするんです。一般的に社内の改革を進めるうえで課題になるのは、各部署の決裁やフィードバックに時間がかかり、なかなか前に進まないこと。GFPは中堅や若手の社員が中心となって始まりましたが、事業部長や役員が“やってみろ”という精神でいてくれるので、スピーディーに企画を進めることができるんです」(広報室、小峰慎司)
例えば、仕事の効率化につながる社員のカレンダー共有は2週間で実現。部署の垣根を超えたメンター制度は3ヵ月のトライアル期間を経て、次年度から正式に制度化することが決まった。
「関わっているメンバーも、正直、驚いています(笑)。カレンダーの共有なんて、誰もがやった方がいいと思っていたことですが、まさか2週間で実現するなんて。特に若手社員にとっては、自分たちの提案がカタチになることでモチベーションが上がり、いい雰囲気が生まれています」(広報室、小峰慎司)
目標設定やスケジュール管理も 社員が責任を持って進める。
2019年5月に約30名で始まったプロジェクトは、社員なら希望すれば誰でも参加することができる。部長職、契約社員など様々な職種の人が加わって、現在は60名強のプロジェクトへと成長した。
「メンター制度では、入社3年目から15年目くらいの他部署の先輩が入社2年目の社員と1ヵ月に1度面談を行い、相談にのっています。当社ではOJT制度を導入しており、新入社員の時にはそれぞれに先輩社員がついてサポートをしてくれますが、2年目になるとOJT制度が終了し、一人立ちをすることになります。2年目の社員からは、“普段はどうしても目の前の仕事で手一杯になりがちだが、他部署の先輩の話を聞くことで視野が広がった”という声が出ていますね。また、だんだんと GFPの認知度があがり、業務の中で気づいた課題をそのままにせず、自分から新しいプロジェクトを立ち上げるなど、自発的に行動する社員が増えつつあると感じます。最近発足したテレワーク推進プロジェクトでは、女性の統括部長が積極的に関わってくれています」(人事部、伊藤陸)
GFPでは現場社員と上層部が連携を取ることでプロジェクトが円滑に進む一方で、ゴール設定の明確化やよりよい仕組みづくりのためのディスカッションにも力を入れている。
「役員や上層部は現場から出てくる提案に対して、基本的にはNOとは言いません。大前提としてみんなが会社のためを思って企画していることですから。ただ、目標設定シートをつくり、上層部というフィルターを通すことで、ただ“やりたい”ことだけではなく目標設定やスケジュール管理まで社員に責任を持ってやってもらい、プロジェクト実現の可能性を高めています。また、テレワークのプロジェクトでは、小さい子供がいる社員や出張の多い若手社員だけでなく、見えないところで働くことに対して懐疑的な意見を持つ人も参加しています。それぞれの意見をディスカッションすることで、より良い仕組みを考えることが大切だと思っています」(広報室、小峰慎司)
ゴールは制度化ではなく、 チャレンジする風土づくり。
テレワーク推進プロジェクトは来年度のルールブック化を目指して進行中。ほかにも部署を超えた情報共有システムの構築や、中期経営会議への提案など、それぞれのチームがフラッグを掲げて改革を先導している。
「GFPの発足からもうすぐ1年。目指しているのは、“社員一人一人がひらめいている”環境づくりです。GFPでは、それぞれの社員の違いを尊重しながら、“みんな違う。やってみよう! いってみよう!”の精神で、主体的にチャレンジできる社内風土を目指してきました。その土台がだいぶできてきた気がしますね。今年は全社員1000人が集まって、会社の未来をみんなで楽しく考えるワークショップなども開催したいと考えています」(広報室、小峰慎司)
GFPの活動を通して、メンバーからは「制度になる必要はないけど、風土になればいいよね」という声が出ているそうだ。働きやすい会社の制度をつくることが目的ではなく、チャレンジできる風土をつくることこそ、東急不動産のコーポレート・フラッグということ。関西支社からもメンバーになりたいという声があがり、その風土は少しずつ、着実に広まっている。働き方改革の正解は、時代に合った働き方を社員みんなで考えること。そして、組織として自分のアイデアを自由に発信できる環境をつくること。〈GREEN FLAG PROJECT〉の活動からは、そんな意思が伝わってくる。
東急不動産