同時代を生きる
アジアの若手作家に注目。
「なぜ収集するか、ですか?アートは、より豊かな視点で世界を知る“窓”になるからです」
現代アートの世界的なコレクター、宮津大輔さんはそう語る。
「これからはじめるなら、今後の国際的活躍が楽しみな若手現代アーティストの作品を買ってはどうでしょう。注目は日本を含めたアジアの作家。
最初は飾りやすい平面作品がいいと思いますが、比較的廉価な映像作品もおすすめです。例えば台湾のロー・イーチュン。ファニーだけどアイロニカルなアニメーションは、僕も気に入ってます」
アジアの若手に注目する理由は2つ。欧米の作家に比べて買いやすい価格と、世相を見る“窓”としての面白さだ。
「そもそも現代アートとは何か。僕は同時代性を帯びた作品が真の現代アートだと思う。そこには、背景にある国の文化や政治の“今”が、スマホのニュースとは違う形で表れます。
日本と似た点/異なる点が混在するアジア諸国、そして日本の今を、翻訳不要のビジュアルで感じられるのは現代アートならでは」
ではそんな“窓”を、初心者はどこで選べばいい?
「初めての人にこそ、世界最高峰の作品が集まる国際アートフェアを強く薦めます。今はライブ配信やウォークスルー形式での閲覧などウェブも充実していて、作品もオンライン購入できる。コロナ禍の間にネットで予習しておけば、いざ現地に行った時の助けにもなりますよね」
例えば台湾の〈台北當代〉や〈アートバーゼル香港〉には、世界中から厳選された、今後評価が高まるであろうお墨付きが既に揃っている。その中で好きな作品を選べば間違いはないし、若手の作品なら20万円ぐらいから買えるはずだ。
「僕は30代の頃、勤務先に内緒で土日と夜勤のバイトを5年間続け、長年憧れていた草間彌生さんの作品を手に入れました。惚れ抜いて一緒に暮らした作品が、人生やものの見方をどれだけ豊かにしたことか。若いうちだからこそ、おすすめです」