蒼井優さん、最近お買いものしてますか?

photo: Kenshu Shintsubo / styling: Kaho Yamaguchi / hair&make: Taeko Kusaba / text&edit: Ayako Nozawa / coordination: Naoko Yoshida

人が欲しいと思うものには、その人の価値観や人生観が表れます。何を思い切って手に入れ、何を大切にしてきたか。“お買いもの”とは究極の消費行動であると同時に、自分の人生を彩るために何が必要なのかを教えてくれるものです。俳優・蒼井優さんのベストバイ・ストーリーは?

本記事も掲載されている、BRUTUS「人生最高のお買いもの。」は、1月11日発売です。

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私自身の買い物遍歴を振り返ってみると面白いほどにその時の自分の興味やテンションが表れています。

20代半ばの私といえば買い物が大好きで、洋服や器、骨董品に家具……、周りにいる目利きの大人たちに憧れて、影響されて、常に欲しいものが溢れていました。

大好きな旅だって、買い物といつもセット。自分だけに時間もお金も使える時期だったからこそ、好きなものを買うのが楽しくて仕方ありませんでした。今でも大事にしていて「本当に買ってよかった」と思えるものも「失敗したな」と思うものもありますが、後悔した買い物はありません。

当時の自分の身の丈には合っていないちょっと背伸びした買い物も、良いものを手に入れて身の回りを固めることで虚勢を張っていたのかもしれませんね。今考えるといじらしくて恥ずかしくて、愛おしい。

「いつか自分が追いつくだろう」と先行投資として買ったものもいくつもありますよ。素敵!と焦がれて手に入れた〈エバゴス〉の白いストラップシューズは、なかなか似合わず、一度も履かずに眠らせていたのですが、10年以上経ってから急に「いいかも」と思えて毎日のように履いています。


ニットベスト66,000円(ブノン×オウンド/ブノン)、中に着たケープ50,600円(ブノン)、カットソー9,240円(アメリカンヴィンテージ/アバヌ TEL:03-3375-3130)、シューズ29,700円(ダンスコ/アバヌ)、パンツ57,200円(ユーモレスクTEL:03-6452-6255)

そんな昔から買い物が大好きな私にとって、出産は大きなターニングポイントになりました。当時はあんなに自分が欲しいもので溢れていたのに、今の買い物の基準は「子供のためのもの」一択。

私の人生ベストバイである〈コム デ ギャルソン〉のスカートをはじめ、20代の頃に買った大事な洋服たちは今はその多くがクローゼットの中で眠っていて、その代わり、「動きやすい・洗いやすい・乾きやすい」の「三大“やすい”」を兼ね備えた服が今の私のユニフォーム。

家に届く通販の段ボールも、自分のためのものではなく、娘の洋服やおもちゃ、日用品に変わりました。2023年、改めて振り返ってみても「本当に買ってよかった!」と思えるものは100円均一で買った便利グッズや文房具など、実用的な日用品ばかりなんです。

昔は「自分の欲求がすべて」の買い物だったけれど、今は自分のエネルギーがすべて子供に向いているから、欲求の矛先も変化したのだと思っています。「ダンボールカッター」みたいに日常の自分を助けてくれる買い物が本当にうれしい。

欲望のままに自分の買い物をしていたあの頃にはきっと考えられないだろうけれど(笑)。買い物はその時の自分を映し出す鏡。今は自分の“欲しい!”は鳴りを潜めているけど、きっとまた自分のために買い物をしたいと思う時が来るはず。

できることなら過去に手に入れた物をすべて手放して家に物が何もない状態でまた一から買い物してみたい。その時に自分がどんなものに興味を持っているのか、今から楽しみで仕方ありません。

蒼井優の人生ベストバイ

〈コム デ ギャルソン〉のパッチワークスカート

19歳の時に少し背伸びして手に入れた、
その後の私の人生に寄り添う大事な一着。

自分に少しずつ投資できるようになった10代最後の買い物で、未成年の自分へのご褒美、そして成人する自分へのお守りとして購入。1週間後の写真集『トラベル・サンド』のロサンゼルスロケにも持っていきました。〈コム デ ギャルソン〉での買い物は初めてで、大人への一歩を踏み出した気がする一着。いつ着てもあの日の愛おしい記憶に包まれます。娘ができてからは、「いつか着てほしいな」という思いで大切に保管しています。

蒼井優の2023年ベストバイ

ダンボールカッター

母になって優先順位が変わった今欲しいのは、手間とストレスを軽くする便利で楽しい日用品。

出産を経て私のライフスタイルは一変。娘用の買い物で、家に届く段ボールが格段に増えました。開封するたびにカッターを探したり、手こずる時間ももったいなくて、藁をも掴む思いで買ったこれが大活躍。お試しで買ったつもりが、家の中での動線や使い勝手を追求した結果気づけば今ではリビング用、玄関用、勝手口用と3個に増えました。「地味!」と言われてしまいそうですが(笑)、これがリアルな2023年のベストバイです。

ダンボールカッター 1,078円(ミドリ