服のミクロな世界に没入し、
着心地を可視化する。
ブランドの営業担当たちが口を合わせたかのように“群を抜いてマニアック”と話すショップが、岡山にある。岡山駅前の繁華街から少し離れた住宅街に店を構える〈カサノヴァ アンド コー〉だ。
バイヤーの福田暁彦さんは元縫製職人。人気や売れ筋のものには目もくれず、生地や縫製で光るものを感じたブランドをいち早く店に揃えている。
品質にこだわり縫製者の名前を服のタグに記す山内や、ハンドクラフト感溢れるアマチなど、全国にまだ名がとどろいていない先物買い的ブランドも多い。前職で得た知識は接客にも生かされ、裏地の縫製や糸一本のことまで、服の魅力を丁寧に解説してくれる。
ついには、3年前から、マイクロスコープを使い、服の生地を独自に解析する取り組みを始めた。これが、糸の番手や本数、生地を形成する密度まで、鮮明にわかる。
手触りや品質表示だけでは判断できない、糸の組織や生地の構成をハッキリと可視化することで、生地の光沢や風合の秘密を読み解き、使っていくと着心地や見た目がどう変化していくかをわかりやすくお客さんに伝えている。
その姿はまるで服を解剖する学者のよう。この店でしか味わえない福田さんの神接客を求めて近隣他県から足繁く通う方も多い。
「微力ながら、ウチを通して、ブランドの服作り、さらには手がけた機屋や縫製工場のことまで知ってもらえたら、服作りの技術の保全に役立つかもしれない。その思いをブランドにも汲み取っていただき、ファッション界では無粋でタブーとされる“語りすぎ”な接客スタイルをご理解いただいています」