小林エリカ(作家、アーティスト)
仕事も何もかもうまくいかないうえに、先が見えない不安が続く中で、ずっと心の支えにしながら唱え続けた言葉です。冬が訪れそうな苦難の日々の中では、今なおこの言葉を繰り返します。ちなみに、同じく池田澄子さんの句集『たましいの話』や『此処』もまた、私が生きてゆく日々の、大きな支えになっています。
荻田泰永(北極冒険家)
なぜ人間は過酷な冒険や探検を行うのか。肉体的に表現される過酷さ以前に、人間固有の知的情熱があるのだと喝破した探検家チェリー・ガラードの名言。知的情熱によって肉体的な困難もいとわない生き物は人間だけだ。そう考えると、この言葉は「人間とは何者か」という問いへのヒントにもなる。勇気を与えてくれる言葉だ。
塩谷舞(文筆家)
仲川利久先生が主宰する劇団に子役として所属していた25年ほど前。先生は「喧騒のなかで話を聴いてもらうにはどうしたらいいと思う?」と問いかけたあとにこう言って「そうすれば周りの人は音量を下げ、耳を傾けて、あなたの声を聴いてくれますよ」と語りました。子供ながらに静かな衝撃を受け、今も大切にしている言葉です。
宮里祐人(〈バックパックブックス〉店主)
星野道夫さんの写真展で出会った言葉。太古から続く時間の中で、私たちが生きられるのはほんの一瞬でしかない。シーカヤックからの景色、カリブーやグリズリーなどの生き物。その一瞬の中で星野さんが出会った心魅かれたものや行動を思い浮かべ「自分は心魅かれたものを大切にできているだろうか」と問う。そんな一節です。
ツレヅレハナコ(文筆家)
20年以上前に「100文字レシピ」を提唱した料理研究家の川津幸子さん。料理の手を抜くわけではなく、レシピの何を削ぎ落としてどれを残すかというブレないセンスと判断力があってこそ成立するレシピに感銘を受けました。人に自分の料理を「簡単でおいしい」と言ってもらうたび、ちゃんとそれができているか思い出します。
小倉ヒラク(発酵デザイナー)
発酵を生業(なりわい)にする僕にとって、何かを学んで思索することは、その先にある誰かにとっての「役に立つ」「おいしい」に向かわないと意味がない。偉大な哲学者からの「自己満足してんじゃねーぞ!」の叱咤激励をいつも心に留めています。ちなみに僕の著書『発酵文化人類学』にもデカルトの名言へのオマージュがあります。