龍崎翔子(ホテルプロデューサー)
宿を営むこと、会社を営むことの成分の多くは愛でできている。愛の有無は、宿泊する旅人にも、共に働く仲間にも自然と伝わっていく。事業に飽きるのが怖くないのかと尋ねられることがある。飽き性の自分が数十年間も建築と連れ添って生きていく人生を選んでいるのは、ひとえに愛するという決意をしたからなのだと思っている。
大根仁(映像ディレクター)
山﨑努が演じた余命幾ばくもない男・⻯彦が、かつての恋⼈との間に⽣まれた息⼦と初対⾯した時に投げかけた⼀⾔。⽣活をしていれば、仕事をしていれば、どうしたって「ありきたり」で妥協せざるを得ない。でもその「ありきたり」がイコール思考停⽌になっていないか?そんな時に僕の頭の中に山﨑努のこの怒号が響くのです。
永井玲衣(哲学者)
一生忘れられない谷川雁の詩「東京へゆくな」の一文。東京へゆくなという強い命令を支えるための論拠となる言葉は、あまりに不安定で脆く、美しい。詩人の論理は、どこまでも遠くへ行ける。ばらばらのものを結びつけ、新しい世界を露出させてしまう。この詩に出会ってから、主張よりも理由が気になるようになった。
ワクサカソウヘイ(文筆業)
人間は島のように「個」に分断されている。でも海の水が引けば一つの大地があるだけで、すべては実はつながっているのではないか。人間関係を織り成すことが苦手だった20歳の頃、この一文に勇気をもらった。他者と手をつなぐことの心強さに触れた時、他者がいることによる憂慮に直面した時、心の中でこの言葉を唱えている。
鳥飼茜(漫画家)
立派な大人とはなんだ。誰かにとってそれは大リーグで前人未到の結果を出した二刀流選手のことかもしれない。誰かにとってそれは、急いでいるのに対向車線の右折車を優先してあげられる人かもしれない。他人の「立派」なんて曖昧で、おのおのが寝転びながら、ふとそうありたいと願う瞬間にこそ、人の真善美の芯があると感じた。
安藤夏樹(編集者)
生きていると自分の意思や能力と関係なく変化を強いられることがある。かつての僕は上司と喧嘩して子会社に飛ばされた。でも、それが今の自分につながっている。どんな変化も「新たな経験を積む」点でそれ自体が進化である。ビートたけしがSMAP解散直後の稲垣吾郎に贈ったこの言葉は、まさにそれを言語化してくれました。