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「ジョヤサー!ジョヤサ!」。掛け声と法螺貝の音色が響き渡り、勇壮に練り歩く人々の活気に満ちたエネルギー。しんしんと舞い散る真っ白な雪景色の中、年に一度賑わいを見せる秋田県・横手市の祭りだ。
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秋田県は山岳地帯や豊かな水に恵まれ、稲作が盛んに行われてきた。〈梵天(ぼんでん)祭〉は五穀豊穣、家内安全、商売繁盛など様々な願いを込めて毎年2月17日、旭岡山神社に奉納する行事で、約300年の歴史があるといわれている。
梵天の見どころはその頭飾り。5mを優に超える丸太の先に、しめ縄や干支飾りなど色彩豊かな意匠を凝らした飾りが掲げられる。
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地元の参加者は「こつこつと半年ほどかけて皆で作りあげた。雪深い冬にはなかなか会うことができない町内の人々に、今年は完成を見せながら山の神社まで奉納することができる。春に向けて活気が湧いてくる」と語り、〈ぼんでん唄〉を歌いながら練り歩く。
夜には〈横手のかまくら〉が幻想的な光を町中に灯す。水神様をまつる小正月行事で、約450年の歴史があるといわれている。

ドイツの建築家ブルーノ・タウトは昭和11年にかまくらを見て、メルヘンの世界を絶賛し、彼の著書『日本美の再発見』にそのときの感動を伝えている。
すばらしい美しさだ。これほど美しいものを私はかつて見たこともなければ、また予期もしていなかった。これは今度の旅行の冠冕(かんべん)だ。この見事なカマクラ、子供たちのこの雪室は!…子供たちは甘酒を一杯すすめてくれるのである。こんな時には、大人たちはこの子たちに一銭を与えることになっている。ここにも美しい日本がある。
『日本美の再発見』ブルーノ・タウト著 (1962/2/20)
祭の期間中、市内各所にできる大きなかまくらの中では、甘酒やおもちなどを食べながら、夜が更けるのも忘れ“話っこ”に花が咲く。
大きく美しいフォルムをスコップ一つで整えるかまくら職人に話を伺った。
「祭りの時期につくり続けて15年以上になる。直前につくり、数日でなくすのはもったいないけれど、子供から大人まで皆が楽しんでくれているのを見ると嬉しい」
中に入ってみるとその温かさにもほっこりとする。約450年の伝統を誇る幻想的なかまくらは、夜になるとライトアップされ、雪景色をやさしく照らす。
躍動とエネルギー。祭りは活気に満ちている。参加するのもよし。見るのもよし。日本を再発見する伝統の祭りに、あなたも足を運んでみては?
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