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イッセー尾形が喜歌劇『こうもり』で演じる“歌わない”看守フロッシュ。表現するうえで大切にしていることは?

俳優のイッセー尾形さんは、3年ぶりの開催となる「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」で上演される『こうもり』の第3幕に登場する看守フロッシュ役を演じる。一人芝居というストイックな表現を続けるイッセーさんにとって、ある種真逆に位置するオペラという壮大な舞台に、どう臨むのだろうか。

Photo: Katsumi Omori / Text: Chisa Nishinoiri / Styling: Mari Miyamoto(STAN-S) / Hair&make: Mariko Kubo

演じる人物すべてが、
幸せになると信じてる

「ヨハン・シュトラウスⅡ世はなぜ、“歌わない”看守フロッシュという役を出したのか。それがまだわからない。朗々と歌うわけでもなく、絶対に主役にならない端役であり、オペラの世界からは弾かれているような人物。必要ないともいえる役を、なぜあえて出すのか。この“必要のなさ”が、実は大きな意味だと思うんです」

今回、3年ぶりの開催となる「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」(小澤征爾が塾長を務め、若い音楽家の育成を目的に2000年に立ち上げた教育プロジェクト)で上演される『こうもり』。ヨハン・シュトラウスⅡ世が1874年に作曲し、明るく軽快な音楽とユーモアがちりばめられた作品は喜歌劇の最高峰として名高い。

ミュージカル『小澤征爾 楽塾オペラ・プロジェクトXVIII』
『小澤征爾音楽塾 オペラ・プロジェクトXVIII』©大窪道治/2016SeijiOzawaMusicAcademy

第3幕に登場する看守フロッシュ役を演じるのが、俳優のイッセー尾形さんだ。一人芝居というストイックな表現を続けるイッセーさんにとって、ある種真逆に位置するオペラという壮大な舞台に、どう臨むのだろうか。

「ライフワークとして壮大じゃないことを続けてきましたが、その延長線上に、まさしく壮大じゃないフロッシュがいると思うんです。

例えば、酔っ払ってるフロッシュはどうやって部屋に入ってくるんだろう。どの程度酔っ払っているんだろう。何を飲んでるんだろう。時間や人物を細分化していけば、どんどんおかしくなっていく。そんなふうに作り上げてきた一人芝居の延長で、フロッシュを捉えたい。という気持ちと、今回は相手役もいます。

朗々と歌い上げるドイツ語、圧倒的な声量、いろんな音を全身で浴びるわけですから、自分の予想もつかない変化が起こると思います。そして忘れちゃいけないのがオーケストラです。若くて未来のある音が塊でやってくるわけです。若い演奏家による蘇生力が押し寄せてくることに、すごく期待しています」

俳優・イッセー尾形

イッセーさんが生み出すキャラクターには常に笑いがある。笑いを表現するうえで大切にしていること、そして喜劇とは?

「人間はもともと、笑いたい動物だと思うんです。笑いたい。これはもう理屈じゃない。喜劇という記号化されてないところ、無意識に通り過ぎてしまうものに改めて笑いという衝動を向けると、いろんなことが笑えてくる。

そして自分が演じるこの人は、幸せになる、と信じています。一見どんどん不幸になっていくかもしれない。でも、周りじゃなくて当人自身が幸せだと思っていれば、それでいい。幸せとは自分が決めるもの。だから今回のフロッシュも、きっと幸せになりますよ」

シャツ¥24,000、ジャケット¥51,000、ドレープジャケット¥76,000(以上ガーメント リプロダクション オブ ワーカース/コンフェクション TEL:03-6336-4771)