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映画界を刷新し続けるカルトブランド、A24の快進撃と社会的影響

若者の間で「カルト的人気」を誇る映画スタジオ、A24。カルフォルニア在住、Z世代の竹田ダニエルがA24のブランディング、社会的影響を読み解く。

text: Daniel Takeda

日本未公開の2作品

「世界で最もすごい映画」と評価され、現在公開されている欧米圏では、A24史上最高の収益を記録した『Everything Everywhere All at Once』(以下EEAAO)。

「誰もアジア系の映画なんて観たくない」と揶揄されてきた中で、クチコミとリピートを中心に集客された衝撃作だ。小さなVFXチームと比較的低予算でもマーベル級の迫力。そしてクィアや、親との世代格差に葛藤を抱えているアジア系アメリカ人のために作られてると言っても過言ではなく、その側面からも話題になった。

『Everything Everywhere All at Once』A24
『Everything Everywhere All at Once』/人生に疲れた移民の中年女性がある日突然マルチバースを救える唯一の存在だと告げられ、戦いに向かうSFコメディアクション作品。2022年3月にアメリカ公開。日本では、23年3月公開予定。Photo: A24/Landmark Media/Zeta Image

社会に大きな影響を与える作品を配給し続けていることで若者の間で「カルト的」な人気を誇っているA24。インディペンデント映画スタジオにファンがつくことは、非常に珍しい現象で、グッズは高額で転売され、Instagramでも135万人以上の莫大なフォロワーを誇る。特にアメリカでは、映画やアート、ファッション、音楽好きの若者にとって、「A24作品が好き」というのは文化的素養があってファッショナブルな人、という自己ブランディングと同義になっていると言っても過言ではない。

今の若者が必要としているリアルな描写を展開し、類を見ないSNSマーケティングで映画業界を無双している稀有な存在だ。フランク・オーシャンなどを起用し、「お洒落なプレイリスト」をサウンドトラックにしたことで話題になった『Waves』、新しいホラーを提示した『ミッドサマー』、そしてアジア系アメリカ人やZ世代のクィアのリアルな葛藤をユーモラスに描いた『EEAAO』や『BODIES BODIES BODIES』など、ネット世代の若者に刺さるニッチかつ波及力のある作品を世に送り出していることが、ブランディングとして成功しているのだ。

『BODIES BODIES BODIES』A24
『BODIES BODIES BODIES』/インターネット社会を生きるZ世代を描いたスラッシャー。20代の裕福な若者たちが人里離れた邸宅でパーティを計画するが、そこで行うゲームが友情と命の取り合いと化す。アメリカでは2022年8月公開。日本公開は未定。Photo: A24/Landmark Media/Zeta Image

映画の最初にA24のロゴが現れただけで、「オルタナティブ」な味わい深さは保証されている。どの場面を切り取ってもSNS映えするカラーリングやアイコニックな演出、そんな先鋭性をいつでも期待できる映画会社として流行を超えたカルチャーを生み出す存在になっているのである。