8cmCD収録の短冊本も発売、再評価が止まらない
nakamura8cm
8cmCDの始まりは1988年2月21日。日本で一気に68タイトルが発売された日です。その前までシングルはアナログ7インチで買っていて、CDはアルバムだけだった。大学生の時にリアルタイムで知りましたが1枚1,000円しましたから、たくさんは買えなかった気がします。
ディスク百合おん
僕も小・中学生の頃が全盛期だったので、どうせなら限られたお小遣いでアルバムをと思っていました。
na
最初に買ったのは日本の短冊ではなくて、洋盤のプリンスでした。初期はCDにアダプターを付けて聴いていたけど、そのうち8cmCD対応トレーのプレーヤーが普及した。
デ
僕が8cmCDにハマったのは7〜8年前で意外と最近なんです。J-POP縛りのイベントでDJをやることになって、音源を探して買っているうちに面白さを感じるようになって、そこからはズブズブと……。沼ですよね
na
8cmCDの歴史って約12年間でほぼ終わるんです。だから2000年以降は、中古屋で1枚10円とかで叩き売られていました。僕が集め始めたのは、その頃から。安いから買ってみようと思ってちょこちょこ変なものを見つけては買ううちに、嬉しくなっちゃって。
今も年1000枚ペースで買っているので1万枚以上はありますが、8cmが冬の時代のコレクションが軸になっているので、百合おんさんとは投資額がだいぶ違うでしょうね。
デ
データ世代の若者がフィジカルに持っておきたいものとして注目するようになり、価格が徐々に高騰していますね。僕は全部で2000枚くらいかな。ブームといわれる背景には、年号の切り替わりも大きいのかなと思います。平成を象徴するアイテムが、令和への移行によって、平成レトロになった。
na
2019年にサカナクションが8cmでシングルを出したのも、注目が集まるきっかけの一つになりました。また去年から7月7日を“短冊CDの日”として、大滝詠一の「幸せな結末」をはじめ、新旧61タイトルが8cmで一斉に発売されたのも起爆剤に。
デ
僕も短冊CDの日に8cmを出しました。今までは作るハードルも高かったけれど、気軽に作れるプレス会社も現れ、インディーズや地下アイドルの作品も増えた。8cmありきで音源を調べる人も増えている気がしますね。
na
最近はダウンロードコードが付いていて、プレーヤーなしでも聴けたりしますしね。
日本固有の文化を深掘り
デ
いわゆるこの短冊のかたちって日本だけなんですよね。8cmを2枚並べるとだいたいシングルレコードのサイズになるんですが、レコードショップ時代、既存棚に小さすぎるパッケージが隠れてしまわないように、この形態になったと教えてもらいました。
na
世界初はアメリカで、日本より1年早い1987年発売のフランク・ザッパの8cm(3インチ)でした。海外では8cmの正方形紙ジャケットはあまりに小さく、プラスチックケースなどでかさ増ししていた。
日本の短冊は、初期1〜2年は半分に折る前提のデザインでレコード会社ごとのフォーマットがありましたが、90年代から折らない仕様になった。ジャケ全面に全身をバーンと使って脚を見せた森高千里のシングルなんかは、2:1の縦長画面が生かされていて秀逸でしたね。
デ
たまごっちもそうですが、ブームに乗っかるCDも多かった。当時、だんご3兄弟も流行りましたが、そこからの亜種でだんご4兄弟とか、いわゆる便乗系が出たり、よく企画が通ったなというのはたくさんあります。
na
いい時代でしたね。非売品の販促物にお金をかけてスペシャルなCDを作ったりすることもできた。20分という収録時間のボリューム感もちょうどよかったんでしょうね。
デ
最近は、同じ曲を様々なメディアでフルコンプしたいという海外のコレクターが買うシーンも見かけます。
na
海外では、日本の短冊CDのことを“スナップパック”と呼んでいますね。
デ
レコードだとレアグルーヴなんかも掘られすぎてすでにお馴染みになってしまう現象があるみたいですが、8cmCDはまだまだ知らないタイトルにたくさん出会える世界。その中に全くノーマークのめちゃくちゃいい曲があったりもする。
音楽メディアの中では、まだそこまで掘られていないから、掘り甲斐がありますね。古いものだけでなく、ここにきて新譜が出ているのも嬉しいところ。見たことのないものを掘り下げるのも楽しいし、当時好きだった曲を8cmで買い直すのもいい。
na
日本の音楽史上、これだけ音楽が売れた時代はないという約12年。ミリオンセラーもバカバカ出ているし、同時におかしなCDがたくさん作られているのも面白い。8cmに触れていると、当時が短いながらも濃厚な期間だったことがわかります。
これまで僕が確認できたものだけでも15万タイトル以上という大量の8cmCDが、世の中には存在していて。いろいろな側面の魅力がありますが、そもそも短冊というこの不完全な形態そのものが、なんとも言えず愛おしいんですよね。
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