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倉本美津留が観てない映画のあらすじを勝手に予想!映画『50年後のボクたちは』

作品タイトルは映画の入口。内容を象徴する重要な役割を担い、第一印象でそれを観るか観ないかの決定打となる。かつて本で「読まずに読書感想文」の連載もしていた放送作家の倉本美津留さんに、気になる映画のタイトルだけで自由にあらすじを予想してもらった。

Illustration: Katsuki Tanaka / Photo: Shinichiro Fujita / Text: Asuka Ochi

映画『50年後のボクたちは』の
あらすじを勝手に妄想。

タイトルからして、これはSFですね。物語の舞台は平均寿命が100歳を超えた近未来。今から30年後くらいの地球です。150歳まで生きた人はさすがにまだいないけど、100歳超えは当たり前。だいたい120〜130くらいですかね。でも、ただ寿命が延びただけで、肉体は若くない。アンチエイジング治療はある程度の進化で止まっていて、みんなヨボヨボです。

でも、長く生きられるようになったことで、アルツハイマーや認知症があまりにも蔓延し、脳の治療だけはすごく発達した。脳の使われている部分って実は少なくて10%ほどといわれますが、この使っていない部分を働かせることによって、脳をより活発に、クリアにすることに成功しています。それは喜ばしいようでもありますが、意識だけが鮮明で忘れたいことも忘れられない、しかし体がツラい未来。死にたい世界でもあります。

そんなある日、また寿命を延ばす新薬が出る。開発しているのは、AIなんですね。それは何のためか?姿形は人間にそっくりでもAIは決して人間になることができない。AIにとってつじつまの合わないおかしなことを思考する人間の脳は不思議に満ちていて素晴らしい宝物であり、彼らはそんな人間の脳を死滅させないようにしていた。少し前までは人間がより人間に近いAIを開発しようとしゃかりきになっていたが、気づけばいつの間にか、人間より数が多くなったAIが人間を飼育する側の世界になっていた。

漫画
©2016 Lago Film GmbH. Studiocanal Film GmbH

物語の中心となるのは、5体の積極的なAI。彼らはそれぞれに自分が面白いと思う100歳超えの人間を飼っていて、死なせずにその脳を50年先までキープさせることに奮闘している。そして人間特有のユニークな発想同士を戦わせるゲームをして楽しんでいる。「どや、俺の人間、こんな発想ができるんやで!」「うわ、悔しい!おい!うちの人間!もっとアホなこと言わんかい!」ってなノリ。

突拍子もないことを言う脳を飼っていたら、AIのなかではステータス。ある意味、ボケててもいいんですよ。AIが面白がっているのは、人間の脳のおかしさ、検索のできなさ。「こいつ今日、調子悪い。AIレベルや。あかん」とか言って、ドーピングさせたりもしてね。

戦わされている側は、うまいこと無意識でやらされている。だから飼われていることに気づいていない。「ディスカッションルームに行きましょう」みたいな感じで連れていかれて、テーマが出てしゃべらされる。

みんなヨボヨボで体も動かないし、会話するのが楽しいからやっているんですが、実は管理されていて、AIたちがディスカッションルームとは別の場所で見ていて、人間がおかしなことを言うとポイントが入っていく。話の脈絡を無視して全く違う話をぶっ込んできたり、訳のわからない妄想に走ったり、「なにそれ⁉」って、想像のつかない発言ほど点数が跳ね上がる。

人間たちも当初はそんなことをやらされてると気づいていなかったんですが、その中の1人が察知し始める。「我々は飼われている!」と。調べていったら、どうやらヤツらは自分たちを150歳まで生かそうとしているということが判明してきて、「この先50年も生かされるのか!」と知った100歳がどうするのか⁉っていう話です。体もしんどいし、まだまだ生かされるなんて、「これはあかん!」と。

それで老体にムチを打ち、恐怖に怯えながらも、AIに対して暴動を起こすことに……。その後、どうなるのかは映画を観てください。まあ、手を替え、品を替えて立ち向かいます。結局、「こんな屁みたいなしょうもないことで人間世界が取り戻せた」というような、そんな話かもしれませんよ。

これはメキシコ人監督による映画ですね。サウンドトラックは、『未来世紀ブラジル』を彷彿させます。救いのない物語の後で軽快な口笛の曲が流れてきて、「一体どんな気持ちになったらええねん!」って。ある意味、『未来世紀ブラジル』を超えてます。

本当はこんな映画でした。

クラスのはみ出し者の14歳・マイクと、風変わりな転校生チック。
夏休みのある日、2人は無断で借用した車で、無鉄砲な旅に出る。

映画を観終えて。

ドイツの青春映画やん!

国は違えど14歳の頃の感覚がリアルに蘇ってきました。ガソリンを盗むために落ちてるホースをあてどなく探すアホさ。簡単に見つからないダラダラさをそのまんま描いてる感じが好きでした。でも、原題『Tschick』って……全く違う。ずるいずるい! 50年後って、そこまで強調することかな?