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2人の巨匠が描く、中国の21世紀とは?新作映画『新世紀ロマンティクス』と『未完成の映画』

中国の第6世代を代表する映画監督ジャ・ジャンクーとロウ・イエの新作が同時期に公開となる。2つの作品の共通点から見えてくるもの。

text: Mikado Koyanagi

製作手法やテーマが重なり合う2作の映画が同時期に公開

中国の第6世代を代表する2人の映画監督ジャ・ジャンクーとロウ・イエの新作が、奇しくも同じ時期に公開されることになった。『新世紀ロマンティクス』と『未完成の映画』。この2本の映画は、公開時期が重なっただけでなく、様々な点で共通点があるのが興味深い。

『新世紀ロマンティクス』は、タイトル通り、21世紀を迎えたばかりの2001年から22年までの約20年の間に、2人の男女が、中国北部の大同(ダートン)から、長江の奉節(フォンジエ)を経て、また大同で再会するまでを描く。

『新世紀ロマンティクス』
ジャ・ジャンクーの新作。『帰れない二人』と重なりながらも、過去作品等のフッテージを巧みに編集することによって、全く新しい作品を作り上げた。チャオ・タオ主演。5月9日、全国順次公開。

一方の『未完成の映画』は、2000年代末頃に撮ろうとして未完に終わっていたある映画を、19年にその時のスタッフやキャストがまた集まって改めて撮影を始めたものの、パンデミックでまた中断を余儀なくされ、その後のロックダウンを経て現在に至るまでを描いたものだ。

『未完成の映画』
ロウ・イエの新作。やはり過去作のフッテージを使いながら、未完成に終わった映画の撮影裏をモキュメンタリー風に描いた。金馬奨劇映画部門最優秀作品賞・監督賞受賞。5月2日、全国順次公開。

どちらも新世紀に入ってから劇的な変貌を遂げた中国において、10年単位という長いスパンの中での人々の変化や移ろいを捉えたものだが、何と登場人物たちの若き日の姿が、前者なら『青の稲妻』や『長江哀歌』、後者なら『スプリング・フィーバー』や『二重生活』など、過去の作品のフッテージから取られているのだ。

その映像は、演者だけでなく、その時代の空気感をも閉じ込めたものだから、リアリティも増す。それは、コロナ禍において新たな製作がままならなかったからこそ出てきたアイデアだろうけれど、彼らがあえて同じ俳優を使い続けてきたことによる賜物でもあった。

もちろん、大半は新たに撮影されたものではあるが、発想含めリサイクルから生まれた作品とも言えるこの2作は、新しい映画作りの可能性を示したものでもあるだろう。そんなジャ・ジャンクーとロウ・イエの現在地を、また中国の現在(いま)を確認しに、ぜひ劇場へ。