『原子の時代:歴史の試練に挑む芸術家たち』(〜2/9)
パリ市立近代美術館
核・原子を描いた芸術家たちの表現に迫る革新的展示
核の脅威が再び世界に迫るまさに今、原子の発見から原爆の発明、投下、核武装や核エネルギー問題の政治利用と、近・現代史を左右し続ける「原子」。各時代の世界の芸術家たちがリアルタイムで直面し、表現したアート作品約250点が本展に会す。
20世紀初頭の原子の発見が既存の物質の概念を根底から覆し、カンディンスキーの抽象絵画やマルセル・デュシャンのコンセプチュアルアートを触発。広島・長崎への原爆投下は、20世紀後半を代表する多数の作家が破壊的な原子、新たな宇宙観など異なる立場で対峙した。70年代以降の国家の核武装、原子エネルギーの地球生命全体へのパラドックスは、世界を変える政治変革の意識をも促す近・現代アートとして多分野の軌跡を残す。原子をめぐるアート史は私たちの現在に根づき、今もなお続く。
『歌川国芳展─奇才絵師の魔力』(〜2/24)
大阪中之島美術館
ダイナミックな武者絵や、猫を描いた新発見作も
奇抜なアイデアやデザインセンスで国外にも熱いファンを持つ江戸の浮世絵師。その傑作約400点を紹介する国芳展の決定版だ。見どころの一つは、正義の味方やダークヒーロー、怪童などを描いた国芳の“武者絵”。今のマンガやアニメにも通じるダイナミックな構図と描写力に、目が釘づけになる。さらに、動物を擬人化した戯画や風刺画にひと笑い。国芳といえば、の猫作品も多数登場。新発見作品《流行猫の変化》は必見!
『手塚治虫 「火の鳥」展』(3/7〜5/25)
東京シティービュー
不朽の名作の生命哲学を、福岡伸一が読み解く
生に執着し、伝説の不死鳥を追い求める人々の葛藤を描く一大叙事詩『火の鳥』。手塚治虫のライフワークでもあった長編マンガにまつわる、初の大型企画展だ。企画に携わるのは生物学者の福岡伸一。新たな生命論「動的平衡」の視点から作品の物語構造を読み解き、手塚が生涯をかけて表現し続けた「生きること、死ぬことの意味は何か」という問いの答えを探求する。時空を超えて存在する超生命体を主役に据えたキービジュアルは、グラフィックデザイナーの佐藤卓。連綿と受け継がれていく輪廻転生の生命観を伝える。
『チ。─地球の運動について─地球(いわ)が動く』(3/14〜6/1)
日本科学未来館
アニメの世界観を体験し、壮大な宇宙の真理を探究
15世紀のヨーロッパ某国を舞台に、命懸けで地動説と世界の真理を探求する人々を描く、マンガ家・魚豊のヒット作『チ。―地球の運動について―』。現在放送中のTVアニメのハイライトシーンとともに、天動説から地動説への転換を紹介する。オリジナルムービーなどの映像展示から、作品の世界観に没入体験できるほか、観測技術に関する展示では天文学や宇宙についての学びも深められる。
『北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで』(3/18〜5/25)
すみだ北斎美術館
北斎をプロデュースした名版元たちとは?
江戸の浮世絵に欠かせなかったのが、絵師の総合プロデューサーである版元だ。本展は、版元たちが葛飾北斎をどうプロデュースし、どんな作品を世に送り出したのかをめぐる企画展。北斎の才能に早くから注目した江戸のメディア王・蔦屋重三郎をはじめ、《冨嶽三十六景》をヒットさせた西村屋与八や、『北斎漫画』を出版した永楽屋東四郎ら、流行を左右したヒーローたちに焦点を当てる。福田美蘭ら現代アーティストによる北斎オマージュ作品も。
『浮世絵現代』(4/22〜6/15)
東京国立博物館 表慶館
草間彌生やKYNEも。現代作家と木版画がコラボ!
浮世絵を生み出した日本の木版画技術で、世界的な現代アーティストが「浮世=今」を描き出す。伝統的な木版画技術を継承する〈アダチ版画研究所〉と作家たちがコラボレートして制作した「浮世絵現代」を、過去作も含め一挙展示。参加アーティストは、草間彌生、横尾忠則、田名網敬一、加藤泉、塩田千春、山口晃、名和晃平、花井祐介、李禹煥、キキ・スミス、N・S・ハルシャ、アレックス・ダッジ、KYNEら総勢約80名以上。
『江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ』(5/30〜7/21)
千葉市美術館
蔦重の仕事を展観しつつ、浮世絵黄金期の名作を
版元・蔦重こと蔦屋重三郎の仕事と浮世絵の展開を俯瞰しつつ、初期浮世絵から江戸後期までの名品を、館の浮世絵コレクションから紹介。例えば浮世絵誕生の歴史と併せ、蔦重が生まれた江戸吉原や湯所を描いた鈴木春信らの美人画を展示。また、蔦重が喜多川歌麿や東洲斎写楽をプロデュースした黄金期の作品や蔦重の没後に展開された浮世絵も。全編を通し、鳥居清長《美南見十二候》、歌麿の狂歌絵本『画本虫撰(えほんむしえらみ)』、本展初公開の歌麿の肉筆画《祭りのあと》(個人蔵)など名品が惜しげもなく展示される。