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服や家具のように、パーソナリティを映す。『Apartamento』編集長の小さなアートとの暮らし方

部屋に飾られるアートには、その人の個性が色濃く映し出されている。インテリア雑誌『Apartamento』編集長のマルコ・ヴェラルディさんはどのようにアートを選び、暮らしているのだろうか。

初出:BRUTUS No.1010「小さなアートと暮らしたい。」(2024年6月17日発売)

photo: Rie Yamada / coordination & text: Yukiko Yamane

アートは服や家具と同じで、パーソナリティを映すもの

世界中のクリエイターたちの住居やオフィスを紹介するインテリア雑誌『Apartamento』。その編集長であるマルコ・ヴェラルディが住むベルリンの自宅は、モノトーンの照明やテーブル、そこにブルーのソファが置いてあるという、とてもシンプルで、しかし訪ねた者を威圧しない、雰囲気のいい居住空間だ。

壁には額装されたアートが飾られている。それぞれ決して大きくはない、いわば小さなアートたち。行く先々で気に入った作品を購入しては部屋のぴったりな場所に飾り、気分で飾り替えもするのだという。

ベルリン在住の編集者、マルコ・ヴェラルディの自宅リビング
ベルリン在住の編集者、マルコ・ヴェラルディの自宅リビングには、亀裂の入った時計が描かれたディラン・ソロモン・クラウスの作品《Untitled(clock)》が飾られている。「この時計、壊れてる」と言うマルコの息子と、時間について話し合うきっかけになることもある。

「私にとってアートは、自分を刺激し、時には考えさせられたり、挑戦を後押ししたりしてくれるもの。ただ美しいだけじゃなくて、物事を違った角度から見るように仕向けてくれる。それがアートの持つマジックだと思うし、アートを買う時は、自分に何かを語りかけてくれるようなものを求めています。部屋にあるのはそう思えたものばかりだから、どれも大切な宝物。例えばジョー・ブラッドリーの作品はミラノに住んでいた頃からの仲で、引っ越す時には共にベルリン行きの飛行機に乗り込んだくらいです」

雑誌『Apartamento』編集長 マルコ・ヴェラルディ
方眼用紙にガッシュ(不透明、重厚な水彩絵具)で描かれたジョーの作品。白い空間に、モノトーンのロボットを描いたように見える。見飽きないので長く過ごすダイニングが定位置。NYのギャラリー〈CANADA〉で購入。

仕事柄、これまで様々な人たちの暮らしと、そこに飾られているアートを見てきたマルコ。彼はアートが、衣服やインテリアと同じく持ち主のパーソナリティを反映するものだと考えている。

「特別なものではなくて、自分自身の一部を表現してくれるような存在なのかもしれないですね」

ディラン・ソロモン・クラウス

ディラン・ソロモン・クラウスのアート作品
ディラン・ソロモン・クラウス/1987年米・オハイオ生まれ。パウル・クレーを想起させる淡い色使いで、神秘的かつ幾何学的な世界の事物を描く。月や時計をよく描くため、筆のみならず、コンパスも創作に用いる。

セルバン・イオネスク

アーティスト セルバン・イオネスクの作品
子供部屋に額装して飾られるセルバンの作品は、マルコの息子にとオーダーした注文絵画。コミカルなキャラクターが、もう一人のキャラクターを組み立てようと苦心する様子をカラフルに描いた。
アーティスト セルバン・イオネスクの彫刻作品
セルバン・イオネスク/1984年ルーマニア生まれ。ニューヨークを拠点に彫刻、絵画、建築など広い分野で活動。本人(上写真の中央左寄り)と同程度の大きな彫刻作品も。カートゥーン的なジェスチャーの作品やモチーフが得意分野。photo:Joe Kramm

ジョー・ブラッドリー

画家 ジョー・ブラッドリーの作品
ジョー・ブラッドリー/1975年米・メイン州生まれ。建築物やロボット、人間を時にサイ・トゥオンブリー的な走り書き、時に輪郭のはっきりしたペインティングで描く。NYの近代美術館、ホイットニー美術館などがコレクション。©Joe Bradley《Way Out》2021年 Courtesy of the artist & Capitain Petzel photo/Gunter Lepkowski