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私が映画を観て沁みた時の話。ミュージシャン、シャーロット・デイ・ウィルソン

あの日あの時、観終えた後に感情が大きく動いた忘れられない一作。ミュージシャンのシャーロット・デイ・ウィルソンが語る、胸に沁み入る物語に出会った時の記憶。

photo: Satoko Imazu / text: Katsumi Watanabe

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18世紀の女性から学ぶ、強い意志と芸術のあり方

燃ゆる女の肖像

学生時代にはプロのホッケー選手を目指していたこともありましたが、進路に悩んだ末、もう一つの夢である音楽家の道を選びました。映像作品はこれまで音楽やスポーツのドキュメンタリーを観ることが多かったかな。ただ、この『燃ゆる女の肖像』を観てからは、映画の見方が変わったんです。

映画『燃ゆる女の肖像』
©2019 Lilies Films/Hold-Up Films&Productions/Arte France Cinéma

18世紀フランスの孤島で、貴族との望まぬ結婚を目前にしたエロイーズと、嫁入り道具となる肖像画を依頼された画家のマリアンヌ。抑圧的な環境の中、2人はいつしか自由を夢見ることになる。そのストーリーに惹かれたのは、もしかしたら登場人物たちと、自分が学生時代に送っていた、禁欲的な生活が重なったのかもしれません。

最終的に、離れることになる2人ですが、マリアンヌは肖像画にあるメッセージを残します。当時は今とは比べものにならないほど、女性の権利なんてなかった。そんなさなかでも、2人はしっかりした意志を貫く。

永遠の愛を、アートに刻み込むという点も、心に沁みました。音楽制作をしていると、聴き手の反応を気にしがちですが、もっと自分の感情を楽曲に込めてもいいんじゃないかと思うようになりました。発表はまだ先だけど、マリアンヌとエロイーズにインスパイアされた曲を作ってしまったほどです。

ミュージシャン・シャーロット・デイ・ウィルソン

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