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アートコレクターのはじめて物語。公認会計士・深野一朗の場合

アートを多数収集するコレクターにも、開眼するきっかけとなった最初の一歩があったはず。今のコレクションを築く、そのはじまりのエピソード、アートとの出会いを公認会計士・深野一朗さんに語っていただいた。

photo: Kazuharu Igarashi / illustration: Masaki Takahashi / text: Keiko Kamijo

思わず考えさせられてしまう、抽象性の高さに魅せられて

「ショッピング中毒なんですよ」と言う深野一朗さんが、現代アートの収集を始めたのは2011年だ。家具や食器などを収集していたが、地震で大半が壊れてしまった。ものを買い集めること自体に疑問を感じ「物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさ」を求め始めた。それでずっと毛嫌いしていた現代アートを見てみようと美術館やギャラリーに通い始めた。

そんな日々の中、12年に東京都現代美術館で毛利悠子の作品と出会った。様々な日用品が、電子制御で生き物のように動きだす空間だった。「劇場感がありつつも抽象性が高く、相反する要素が混在しているのが魅力。コンセプトを見せられるというよりも、ふと考えさせられてしまう。見た後、すぐに開催された展覧会で作品を購入しました」

最近は作品単体よりも作家自身をサポートするような収集方法に変化した。「購入する作品点数は減ったし、交流する作家も限られますが、その分関係が深くなりました」

毛利悠子の《Shirohebi》

アーティスト・毛利悠子《Shirohebi》
毛利悠子の《Shirohebi》2013年、ミクストメディア。カセットデッキを回すとその音声が電気信号に変換され、ノイズになって下の受話器から出る。作家自らがインストール(設置)した。