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本拠地・京都で〈小川珈琲 堺町錦店〉がオープン。目指すは100年先も続く店

今も昔も喫茶文化が盛んな京都。コーヒーショップは数あれど、新しく登場した店はあの老舗珈琲店による社を挙げてのチャレンジだというから、ちょっと見逃せない。キーワードは100年先も続く店。いかに?

Photo&Text: Yusuke Nakamura

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老舗の名喫茶はいわずもがな、マイクロロースター系のスタンドも少なくない河原町エリアに新たなコーヒーショップが登場。2022年2月11日にオープンする〈小川珈琲 堺町錦店〉だ。

〈小川珈琲〉の創業は1952年。京都に本社を持ち、全国的なサプライチェーンで有機コーヒーでは、家庭用コーヒーの国内シェアNo.1を誇る珈琲店だが、堺町錦店は本拠地で社を挙げての新たな挑戦というから気合十分。それはコンセプト、メニュー、スペースにしっかりと表れているようだ。

小川珈琲 堺町錦店
坪庭には、33種類の植物で飾られた静岡の天城山産の軽石を。席数は44。BGMの選曲はKYOTO JAZZ MASSIVEの沖野修也が手掛ける。

コンセプトは100年先も続く店

堺町錦店のコンセプトは100年先も続く店。その心は「珈琲文化を未来に繋げるために絶えずチャレンジすること」。そう話すのは新店舗のプロデュースを手掛けた〈小川珈琲〉の宇田吉範。

堺町錦店は「本物のコーヒーを飲み続けられる環境とは?そして豆を作ってもらえる環境とは?」を突き詰めたひとつの到達点なのだそう。例えば、サステナブルのメッセージを押し付けるのではなく、「日常に馴染むからこそ理解される。日常に馴染むためにはスペシャルティコーヒーでも毎日飲めるものでないといけないわけです」(宇田さん)。

毎日飲む何気ない一杯が「結果としてオーガニックだった、と。フェアトレードだった、と。これからはそんな状況にしていきたいんですね」(宇田さん)。これは国内では他よりフェアトレードに先んじていた〈小川珈琲〉の現在形のヴィジョンでもある。

小川珈琲 堺町錦店
GRANCAの名を冠する8種類のブレンドとシングルコーヒー。エチオピア、グアテマラなどの深・浅煎りで¥600~¥680。ネルドリッパーのハンドルは岡山の真鍮作家Lueによるもの。

スペシャルティかつ、デイリーなコーヒーを

2021年より東京でフラッグシップショップ2店舗を展開し、器具や抽出、コーヒー豆の組み合わせで最大4500種類もの味わい方が選べる〈小川珈琲〉のいわば実験的スタイルのOGAWA COFFEE LABORATORYとは打って変わって、堺町錦店のコーヒーメニューは〈GRANCA〉の8種がメイン。「あえて増やさず、日常的に飲めるコーヒーに絞った」(宇田さん)そうだ。

淹れ方は、直営店では初となるオーガニックコットンによるネルドリップで、日本初となるスイス製TONE社のドリップマシンを導入。抽出は88℃で、と低い温度設定だが「濃いけど、キツくない。冷めても美味しい」を実現。スペシャルティかつ、あくまでデイリーにこだわる。

店内で焼かれる京都産小麦の食パンと糀バター

堺町錦店では〈小川珈琲〉で初となる食パンを店舗内で焼き、提供する試みも。いわゆる高級食パンではなく、毎日食べても飽きないシンプルな味わいを目指したという。

初チャレンジこその執念?なんとか地元食材で、と通常はパンには不向きとされていた京都産の小麦を使用し、試行錯誤の末に理想形を完成させた。 炭で焼かれたトーストの素朴な香ばしさに、ほんのり甘い糀バターをこれでもかとたっぷり塗って味わってみてほしいところだ。

現在形のうなぎの寝床。2階にはイベントスペースも

堺町錦店のロケーションは“京の台所”こと錦市場にほど近い、築100年以上の京町家。既存の構造を活かした町家改装はすでに目新しいわけではないけれど、ここまでアップデートし蘇らせた、うなぎの寝床はそうそうないのでは。

設計の段階から機能性はもちろん、これまでとこれからの保存性を重視したという。つまり“100年先も続く”を考えること。それは100年前から続く空間からどうバトンを受け取るのか?を考えることでもある。

吹き抜けのエントランス、木材と調和するモルタルの壁、清々しい坪庭をはじめ、夜はまるでバーのような雰囲気となる照明や、滑らかな段差など、細かい施工や演出に至るまで、現代的な洗練の趣向が凝らされた空間となった。2階には小さなイベントスペースが設置され、現在(~2022年2月20日)は河井寛次郎をはじめとした作家の器などが展示販売されている。

「コーヒーを通して文化を継続することや、コミュニケーションをつくれたらと思っています。というのも家にいてなんでもオーダーできる時代にわざわざ店に来てもらうわけで。ここだけで生まれる時間を提供できればと考えています」と宇田さん。

じっくりと落ち着くもよし、うろうろと坪庭と展示を鑑賞するのもよし。まずは一杯のコーヒーから〈小川珈琲〉の現在形のフィロソフィーを体感してみてはどうだろう。

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