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地元アーティストが案内する地域密着ツアー。〈ニッチャートラベル〉プロデュースの独創的な金沢旅

舞台は東京駅から北陸新幹線で約2時間30分の金沢。日本三名園の兼六園、茶屋街や武家屋敷の街並み、現代アートや伝統工芸の美術館など、新旧の文化が交差する街を2人の外国人ゲストが訪れた。旅先案内人は金沢出身で国内外で活躍する、陶芸家で建築家の奈良祐希。地域に密着し、共創する旅の新しいプラットホーム〈ニッチャートラベル〉が企画した特別なツアーとは。

photo: Nik van der Giesen / text: Nao Yasuta

地域のこれからを共創する旅の新しいプラットホーム〈ニッチャートラベル〉。地域活性を目的とした「ナビタイムジャパン」が「阪急交通社」と共同で立ち上げたプロジェクトで、旅を通して地域の活性化や人々の交流に貢献することを目指している。従来のパッケージツアーと一線を画すのは、エリアをよく知るクリエイターや文化人が旅先案内人としてプランニングしてくれること。独創的かつ地域密着型という、新しい旅をオーダーメイドで提案しているのだ。

今回は金沢で生まれ育った陶芸家で、建築家としても高い評価を得ている奈良祐希が案内人。金沢で350年以上の歴史を誇る茶陶の名窯「大樋焼(おおひやき)」の家系に生まれ、現当主の11代大樋長左衛門を父に持つ奈良。地元である金沢、石川県を盛り上げ、貢献したいとの想いから〈ニッチャートラベル〉の案内人を引き受けた。

今回はインバウンド向け高付加価値の旅の提案という側面もあり2名の外国人観光客が参加。普通では味わえない、特別な旅の一部をレポートしよう。

奈良祐希(陶芸家・建築家)
奈良祐希(陶芸家・建築家)
なら・ゆうき/1989年、石川県金沢市生まれ。東京藝術大学で建築、多治見市陶磁器意匠研究所で陶芸を学び、東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻を首席卒業後に北川原温のもとで学んだのちに独立。2021年、建築デザインオフィス「EARTHEN」を設立。HP:https://yukinara.jp/

アーティストと巡る、金沢の観光名所・名店寿司。大樋美術館から近江町市場まで街歩き

まずは、奈良のルーツである「大樋美術館」へ。大樋焼は石川県金沢市で生産される焼き物で、象徴的なのは艶やかな飴釉の作品。京都・楽焼の脇窯で、4代目の一番弟子であった初代長左衛門が、独自に飴釉という釉薬を使うことを許されて以来、350年以上このスタイルが継承されている。

初代から窯場があった橋場町の近隣には、時代の変化とともにマンションやビルが立ち並ぶようになり、1990年に窯場を移築。跡地に建てられたのが大樋美術館で、その前年に奈良は生まれた。
展示室は3つに分かれており、初代長左衛門と裏千家4代・仙叟宗室(せんそうそうしつ)の作品、大樋焼歴代の作品、大樋家と関わった文化人や芸術家などが残した作品や資料を公開していて見応えがある。

隈研吾がデザインした大樋ギャラリーでは、10代の故・大樋陶冶斎、現当主11代の大樋長左衛門、そして奈良の作品を購入できる。来館者がお抹茶をいただけるテーブル席の傍、煌々と輝く金箔の建具を開けると、奥には非公開の茶室が設けられており、こちらで一服させていただくことに。

茶席では金沢や大樋焼の歴史に話がはずむ。茶碗だけを一途に作っていた9代と、独創的な芸術家、文化人との交流や最先端の芸術文化に触れながら、時代の空気感を取り込もうとした10代・陶冶斎はいつも議論をしていたと現当主の11代は話す。大樋焼は伝統を受け継ぎながらも、時代を反映し変化し続ける窯元。作家自らが作品に個性を見出しながら発展してきた歴史がある。奈良自身も生い立ちへの葛藤を持ちながらも、偉大な先人たちの想いを受け継ぎ、「陶芸と建築の融合」という個性を見つけて日々創作活動に励んでいる。

街歩きをしながら、金沢の人と歴史に触れる

前田利家公の神霊をお祀りしている宇多須神社に車で向かい、ひがし茶屋街をぶらり歩き。奈良は幼少期、よく茶屋街あたりを散歩した記憶があるとか。昼は観光客でにぎわうエリアだが、夜は街が静まり、街灯が灯るようになると芸妓が演奏する太鼓がポンポンと聞こえる。

金沢の街の中には犀川と浅野川という2つの川が流れている。金沢では伝統工芸が盛んだが、水は工芸の原資。大樋焼の窯も浅野川から近くに位置しており、陶芸はもちろんのこと、加賀友禅を川で流したりと、川の近くでは特に工芸が栄えたことを歩きながら学ぶ。

歩いて巡れるコンパクトさは金沢旅の魅力の一つ。天気に恵まれ、ひがし茶屋街から近江町市場まで徒歩10分弱。近江町市場に来ると、歴史のある街並みから、庶民的な街へと場面転換する。300年以上の歴史を誇る市場で、地元で獲れる魚介類や野菜を販売する店が軒を連ねる。一年を通して、地元客や観光客でにぎわい活気にあふれ、生牡蠣や甘エビなど、新鮮な季節の海鮮を店先でそのまま食べることができる鮮魚店もある。

金沢で食べたいものといえば、なんといっても寿司。金沢駅前の旅館・金沢茶屋のロビーから中庭を抜けると、ふんわり酢飯の匂いが漂った。暖簾を潜ると職人が行き交う活気ある店内。生きる伝説、森田一夫のイズムを継承する寿司の聖地「小松弥助」で昼食をいただく。ここは予約が取れないことで有名な店だ。

お刺身、握りの盛り合わせとテンポ良く寿司が運ばれてくる。弥助の巻物が特にうまいと聞いていたが、終盤に出てくるうなきゅうに思わず唸ってしまう。追加オーダーでネギトロの巻物も注文できるが、これまた絶品だ。

陶芸弟子入り体験でマイ茶碗作り。インスピレーションは身近にある自然

竹林が揺れる音。湧き水が流れる小さなせせらぎ。工房の周辺は兎や狸、熊などいろいろな動物が通る獣道ができており、特に新雪が積もった日の朝には足跡が残り、その気配がよくわかる。

工房には、登り窯、茶碗専用の窯、飴釉専用の窯、奈良作品専用の電気窯などが設けられ、現当主と奈良がそれぞれに作品を制作している。アウトプットは世代で変わっても、自然との距離間や、作品への向き合い方は確実に受け継がれていると奈良の言葉から伝わる。

弟子入り体験では奈良が型を用意し、ゲストは自分の茶碗になるよう形作っていく。型を持つと初めはずっしり感じるが、土は柔らかい。広げたり伸ばしたり、削ったりして仕上げていく。高台が見えるのがいいか。熱湯に耐えられる厚みになっているか。飲み口は自分好みか。重みをどのくらい残すか。塩梅を探っていく。考え込んでいるとすかさず「子供の頃、公園の土で遊んだように自由に」と奈良からのアドバイス。

茶碗を作るとき、作り手の人となりがわかると奈良は言う。立ち止まってまず考える慎重な人。迷いなく手を動かし早く仕上げるアグレッシブな人。10分、20分手を動かして、煙草を吸って休憩してからまた作る人。一概に言えるものではないが、国籍によっても明らかに傾向があるというのは面白い。

2023年、金沢の問屋街の入り口に完成したユニークな建築「Node Kanazawa」へ。建築家として奈良が設計を担当した。外壁、天井の土壁が印象的。その道40年以上の左官職人による仕上げで、敷地の残土、県内を流れる手取川の砂利や大樋土の陶土を混ぜ込み、風、地震に耐えられるかを粒子を研究する研究者の先生と計算をしながら設計された。おもわず触れたくなる手仕事の質感が印象的だ。

建築は人々が出会う場になるようにと、ふたつの道が交差し、風の流れも計算されている。施設内にはギャラリー、カフェ、オフィス、ミーティングやセミナールームが併設され、オープンして間もなくカフェに長蛇の列ができるなど、すでに新しい人の流れが生まれている。建物だけでなく、ギャラリーも語りどころが多く、ツアー客も真剣に耳を傾けていた。

現役で活躍するアーティストに、旅案内してもらう機会はそうないだろう。奈良のファンはもちろん、陶芸を趣味にする人や、アートコレクターなど、ものづくりや表現の世界に少しでも興味があればインスピレーションを受けるツアーになることは間違いない。一緒に街を歩くことで地元の目線を共有するだけでなく、アーティストの思想に触れることもできる。

予約困難店をアサインしてくれるのも、「ニッチャートラベル」の強み。地域と密接に関わり合いながら活動するコーディネーターを立てることで、特別な体験をしたり、記憶に深く刻まれるような旅が期待できる。