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沖縄・竹富島で1泊2日旅。南の島リゾートで触れる、変わらない確かなもの

非日常だけど、土地の文化を身近に感じられる稀有なリゾート〈星のや竹富島〉 が、開業から10周年を迎えた。明日さえわからぬ日々で、たしかなものに触れたくて、恋い焦がれた離島へ向かった。

photo: Tetsuka Tsurusaki / text: Ikuko Hyodo

星のや竹富島、開業10周年

恋い焦がれた離島

石垣に挟まれた白砂の道、悠然と歩く水牛、赤瓦の民家、屋根からこちらを見下ろすシーサー。竹富島には多くの人がイメージする、八重山の原風景が広がっている。島の周囲は10㎞足らず。石垣島から船で10分ほどでアクセスできることもあって、日帰りで観光をする人の多い島だが、“半日あれば回れる場所”に泊まることで見えてくる景色もある。

「竹富島でぜひ過ごしていただきたいのは、夕方から翌朝にかけて。日帰り観光の方がいらっしゃらない時間帯が、実はとても美しいのです」

〈星のや竹富島〉の総支配人・片岡順平さんはこう話す。同リゾートホテルがオープンしたのは、2012年6月のこと。島の東海岸近くに拓(ひら)かれた敷地には、赤瓦を葺(ふ)いた木造平屋の客室が48棟並んでいる。開業当初、手積みの石垣は白くてまぶしく、植栽したての若木はどこか弱々しくもあり、真新しい集落を目の当たりにした島民は「なんだか気恥ずかしい」と感想を漏らしたそう。

「あれから10年経って、石垣や赤瓦はいい色に育ち、木々も生い茂り、島の方々にも“ようやく竹富島らしくなってきたね”と言っていただけるようになりました」(片岡さん)

 何もしない贅沢はリゾートの醍醐味といえるが、客室の南側に向いた大きな窓から見える景色や、夕暮れ時に「ゆんたくラウンジ」で聴く三線(さんしん)の音色は、心と体を優しく解きほぐしてくれる。敷地を散策していると、「命草(ぬちぐさ)の庭」と呼ばれる風通しのいい畑を見つけた。薬草を意味する命草は、かつては無医村だった島の人々の健康を支えてきた野菜やハーブ。隆起サンゴ礁からなる竹富島は表土が薄く、水田耕作ができない。その上、山や川もなく水資源が乏しいなかで、自給自足をしてきた歴史がある。作物を育てることは生きることに直結し、収穫への祈りや感謝が種子取祭(なたどぅい)をはじめとする、数々の祭事や芸能へと発展してきた。

「私が星野リゾートに入社して竹富島に来たとき、島で伝統作物を栽培しているのは、前本隆一さんただ一人になっていました」

 そう話す小山隼人さんは前本さんに師事して、竹富島特有の畑文化や農作物を継承する「畑プロジェクト」を2017年にスタート。イモ、ニンニク、粟(あわ)、ウイキョウなど、栽培する作物も増えてきたが、特に思い出深いのがクモーマミという在来大豆を初めて収穫したときのこと。

「クモーマミで豆腐を作って、島のみなさんに食べていただきました。普通の豆腐よりも野性味があるのですが、それを食べたおじい、おばあが、島の人たちも聞いたことのなかったような昔話を次々と始めたのです。一つの作物の種が持っているパワーを感じた経験でした」

 現在94歳の前本さんは、今年から〈星のや〉の畑で試作を始めた、麦の生長を心待ちにしている。

「麦が収穫できたら、味噌や醤油も造ることができる。この麦で作る天ぷらもおいしいんだ。祭りで奉納する作物をなくするわけにはいかないから、一人で作ってきたけど、今は小山くんに励まされてるわけさ」

星のや竹富島
10年かけて島らしくなってきた、見晴台からの全景。

先人たちの知恵から生まれた
島の宝を守り、伝える

琉球の木造帆船「サバニ」を竹富島で復活させた人もいる。本土復帰前、先人たちは稲作をするために、15㎞ほど離れた西表島(いりおもてじま)までサバニを漕いで渡っていた。そんな英雄譚を竹富島出身の上勢頭輝(うえせど あきら)さんは、おじいたちから聞かされて育った。しかし一度は島外へ出て、戻った頃には語ってくれたおじいもだいぶいなくなり、若い世代はサバニの存在すら知らなくなっていた。

「子供たちは中学を卒業して、15歳で島を出ていく。だけど自分の島の海のことくらいは、庭のように知っていてほしかったんです」

 上勢頭さんの活動に共鳴した〈星のや〉では、サバニに乗るアクティビティを提供。サバニは帆に風を当てたり逃がしたりして、風を読みながら操縦することで水面を滑るように進む。上勢頭さんは繰り返す。

「伝えたいのは、知識じゃなくて知恵。竹富のおじいたちが当たり前にやってきたことなんです」

島のいいところは
自分で見つければいい

集落で過ごす松竹昇助さんも由布島(ゆぶじま)までサバニで渡り、稲作を行っていた。観光のシンボルとなっている水牛を、農業利用のために石垣島から初めて竹富島に連れてきたのも松竹さんだ。農作業のあと、夜の手仕事として民具を作り始めたのだが、近代化が進み、手仕事に重きが置かれなくなった時代も熱心に作り続け、今では随一の名人となっている。月桃(げっとう)、阿檀(あだん)、苧麻(ちょま)など島に自生する植物を材料とする民具は、〈星のや〉の備品としても取り入れられていて、凜として親しみのある佇まいには、松竹さんの人柄がにじみ出ている。

「竹富島は、食べるところがちょっと多くなったくらいで、昔から全然何も変わってない。年寄りはよく言ったもんさ、“あんたら、ここに何を見に来たの?”って。特別なところなんて何もない島でしょ。いいとこは自分で見つければいいんだよ」

 何もかもが変わったようにさえ思える世の中で、「何も変わっていない」と言い切ってくれるのは、なんと心強いことか。外の人から見れば、竹富島は特別なことであふれている。それは島の人たちが大切に守ってきたのはもちろん、時として外から来た人がかけがえのない価値に気づき、島の人と一緒に守ってきたからだ。日帰りは言うまでもなく、1泊で島を去るのがもったいないのはわかっている。それでも変わらない、たしかな島の宝に触れたという実感は、しっかり残っている。

MODEL PLAN

1日目

11:30 石垣港離島ターミナルから船で竹富島へ。
12:00 〈カフェテードゥン しだめー館〉で八重山そば を食べる。「なごみの塔」を見て集落を散策。
13:30 〈星のや〉のアクティビティ。「海を駆ける 島風 プライベートサバニ」でサバニに乗ってみる。
16:30 〈星のや〉にチェックイン。「ゆんたくラウンジ」で、三線演奏「夕凪の唄」に癒やされる。
17:30 客室でまったりくつろぐ。
18:30 ダイニングでディナーコース「琉球ヌーヴェル」を堪能する。
21:15 プールサイドの芝生の上で星を見ながら「てぃんぬ深呼吸」(ストレッチと深呼吸)を体験。

2日目

06:30 アイヤル浜で日の出とともに「よんなー深呼吸」(ストレッチと深呼吸)を行う。
07:30 ダイニングで「島人の朝ごはん」を食べる。
09:00 客室で読書をする。
10:30 アクティビティ「畑文化を味わう」で伝統作物の収穫を体験。命草のフリットを味わう。
12:30 チェックアウト後、ダイニングでランチ。
14:00 水牛車に乗っでみる。
15:30 〈アトリエ五香屋〉で器を吟味。
17:20 竹富港から船で石垣島へ。

SPOT DATA

星のや竹富島
「夢中になるという休息」をコンセプトに、独創的なテーマで、圧倒的非日常を提供する星のや。星のや竹富島では、琉球赤瓦の街並みや手積みの石垣に囲まれた集落に、暮らすように滞在することができる。1室あたり1泊112,000円〜(食事別)チェックイン15時、チェックアウト12時。通常予約は2泊より、1ヵ月前から1泊の予約も受け付けている。
住所:沖縄県八重山郡竹富町竹富|地図
TEL:0570-073-066(星のや総合予約)
HP:https://hoshinoya.com/taketomijima/

カフェテードゥン しだめー館
島の味を楽しめる食堂居酒屋。オリジナルのもずくそばや、長命草・半熟卵・三枚肉がのった竹富そばが人気。写真は定番の八重山そば。
住所:沖縄県八重山郡竹富町字竹富361|地図
TEL:0980-85-2239。
営:11時〜14時LO、18時30分〜20時LO
休:不定休

アトリエ五香屋
仲筋集落にあるアトリエ兼店舗。八重山の原土を使った器は、おおらかで温かみがあって、暮らしに馴染む。陶シーサー作り体験もできる(要予約)。
住所:沖縄県八重山郡竹富町竹富1478|地図
TEL:0980-85-2833
営:10時〜17時(昼休憩あり)
休:不定休

コンドイ浜
島の西側に広がる、青い海と白い砂のコントラストが美しい、“これぞ沖縄”なビーチ。潮が引くと沖合に砂州が出現することで知られ、遠浅なので歩いて渡れる。

新田観光
水牛車観光とレンタサイクルの店。水牛車観光は、30分ほどかけて赤瓦が並ぶ集落を巡る。コンドイ浜や西桟橋などに足を延ばすなら、自転車が便利。
住所:沖縄県八重山郡竹富町竹富97|地図
TEL:0980-85-2103
休:水曜休、不定休

西桟橋
青い海に向かって延びる、現在は役目を終えた桟橋。国の登録有形文化財。かつてここからサバニに乗って、西表島などへ出かけていた。絶好の夕日眺望スポット。

TRAVEL MAP

竹富島トラベルマップ
石垣空港から竹富島行きフェリーが出ている石垣港離島ターミナルへは、バスまたはタクシーで移動。所要時間は約30分。竹富島へはフェリーで約10分。竹富港到着に合わせて、14時15分から〈星のや〉の無料送迎あり。

*最新情報を追加しました(2022.8.1)