選んだ人:掟ポルシェ(ミュージシャン、DJ)
おきてぽるしぇ/1968年北海道生まれ。〈ロマンポルシェ。〉ボーカル&説教。DJや文筆業のほか、妻・日下ゆにと、サブカル男女に優しい結婚相談所も開業。
「ここには圧倒的に“普通”がない」
掟ポルシェさんは、静岡県富士宮市のロコドル3776(みななろ)をそう語る。「意味がわからないものや混沌に身を任せるのが好きで、定型化されたフォーマットや正論をどうしても呑み込めない自分にとって、“ややこしいことだけが制作のモチベーションに値する”みたいな矜持(きょうじ)を持つ3776は、たまらない存在です」
前身は、プロデューサー石田彰の提案に応えた富士宮市役所が、「わが街のAKB」を目指して作った期間限定ユニット。地方公共団体の運営による、全国でも稀なアイドルだった。その運営を石田が引き継いだのが2013年。富士山の標高である3776の名でデビューさせ、翌年には井出ちよののソロユニットに。掟さんが出会ったのはこの頃だ。
「ご当地アイドルらしく、日本の四季や神話をテーマにした曲が多い。ファーストアルバムも、3776の富士山を3776秒(アルバム1枚分/62分56秒)で登りきるという謎コンセプトで作られています。音楽は複雑なメロディや変拍子の連続で、中にはニューウェーブテイストのセルジュ・ゲンズブールみたいな曲もある。すんなり理解できるものが一つもない現代音楽のように、我々を置いてけぼりにしてくれる、そんな音楽性に興味を持ったんです」

難解な音楽もこなす驚異のアイドル、井出ちよの
「実験的で攻めた音楽を志向するプロデューサーがやりたい放題の作品を作り、突出した能力と魅力を持つ天才的なアイドルが完璧に表現する。小西康陽さんと野宮真貴さんのピチカート・ファイヴや、戸川純さんらのゲルニカに近いのかもしれません。
今もライブは〈沼久保地区水辺の楽校〉という公園で月に1度、無料で行われ、複雑で難解なものを求める音楽好きが、“こういう変態的な音楽がほかにはないんだよ”って、東京や大阪から4、5時間かけて集まってくる。もはやアートなんだと思います。長年追いかけ続けても、いまだに毎回刺激的。“いやー、今日のライブもワケわかんなくて最高!”って思わせてくれるんです」
掟ポルシェが選ぶ一曲
