小野リサが、シンプルなデュオを演奏した理由とは
アントニオ・カルロス・ジョビンの生誕100周年を目前に、小野リサが、その歴史的な楽曲を取り上げたカバー集を発表する。演奏は歌とギターに、ピアニストの林正樹の演奏のみ。改めて、ジョビンの魅力とは。
「実は初めて弾き語りをした曲が『ワン・ノート・サンバ』なんです。まるで景色が変わるように、コードが少しずつずれていく。本当に魅力的でした。『白い道』(1994年)という曲に参加していただき、お会いすることができたんですが、本当に音楽に夢中のチャーミングな方で。今もいい思い出になっています」

温もり溢れる演奏と録音で、ジョビンの名曲を新たに聴かせる
「ピアニストの林さんとは『Montreux Jazz Festival 2014』へ出演した時にお会いして、その後に共演するようになりました。2025年の音楽フェス『築地ジャム』で、林さんとのデュオでジョビンの曲も演奏し、とても楽しかったので、一緒にアルバムを制作することにしたんです。
林さんは音楽の幅が広く、例えば私との演奏にはどんな音が必要なのか、すぐに察知して、的確なアイデアを出してくれる。即興演奏をしても、身を委ねることができるんです。2人で曲を聴きながら選曲し、リハーサルを進めて。大阪・関西万博でも歌った『あなたを愛してしまう』、以前にもバンドで演奏した『白と黒のポートレイト』など、全12曲を選びました」
サックス奏者、渡辺貞夫も参加している。
「私の父が貞夫さんとご縁があり、幼少期にサンパウロで出会い、1979年に田園コロシアムで開催された『Live Under The Sky』では、エルメート・パスコアールさんと共演された時もお邪魔して。楽屋にエリス・レジーナさんがいらして驚きました。
貞夫さんは林さんとも共演されているので、お声がけしたら快諾いただき、3曲演奏してもらいましたが、中でもバラードの『あなたのせいで』では、キータッチやブレスの音まで、そのまま録音されていて。色気が増すと言いますか(笑)。これも林さんの計らいですね」
レコーディングは編集なしのほぼ一発録(ど)り。それだけにライブ感が伝わってくる。
「映画『国宝』を観た影響があるんです。田中泯さんの踊りや所作が、飾らないのに本当に美しかった。それなら、“私も包み隠さずやってみよう”と、背中を押してもらったところはありますね」

2027年に生誕100周年を迎えるボサノヴァの創始者、アントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲を、ピアニストの林正樹とデュオで取り上げたアルバム。互いの息遣いも聞こえるような親密で、即興も交えたセッションを聴かせてくれる。渡辺貞夫がゲスト参加。ライナーノーツを村上春樹が執筆。