忘れられないおもちゃの話。「イノベーションが詰まった奇妙な変形ロボ」漫画家・魚豊

あの頃夢中になったおもちゃは、今でもはっきりと覚えている。あの時買ってもらえなかったおもちゃも心の片隅に残っている。年を重ねても、記憶に残り続けるのはなぜだろう。漫画家・魚豊さんが語る、おもちゃとの話。

本記事は、BRUTUS「TOY LIFE」(2026年3月2日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

illustration: Tomo Oriyama / text: Emi Fukushima

僕が小学生の頃のおもちゃの定番は、ゲームでした。ある時期を境にショッピングモールのおもちゃ棚はPSPやニンテンドーDSのソフトコーナーに替わり、放課後に友達と持ち寄るのもゲーム機。だからこそかえって、ごくわずかながら質量や手触りのある旧来的なおもちゃに触れた記憶が色濃く残っています。

中でも印象深いのが、《トランスフォーマー》です。ロボットから乗り物へ、ロボットからまた別のロボットへ、と自在に変形できて、「普通のおもちゃの倍楽しめるじゃん!」と衝撃を受けました。パーツのしまい方や動き方の一つ一つに驚きがある一方、説明書を読まずに直感的に楽しめるシンプルさもある。関節を動かし、パーツをスライドさせては、ひたすら触っていました。

特に忘れ難いのが『超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説』の《ダブルフェイス》です。ダブルフェイスという本体とは別に、マイクロンと呼ばれるライダースーツを着たロボットのミニフィギュアが付いていて、分解してさらに2体になったり、足を開いてダブルフェイスの頭部パーツになったりと、やりすぎにも思えるほど奇想天外に姿を変えられるんです。その奇妙でグロテスクなデザインがカッコよくて、子供心に刺激的でした。

《トランスフォーマー》は、現在のタカラトミーが開発したおもちゃを起点にアメリカで映画化され、日本で逆輸入的にヒット、流通した経緯があります。外部生命体が地球に馴染むために飛行機や戦車をスキャンして擬態したという設定が後づけされたことを筆頭に、“変形するロボット”を起点に物語が膨らんだことも秀逸ですよね。

誰も見たことがないアイデアを生み出し、形にした日本のメーカーの開発力と技術力、そしてそれが面白い作品になると踏んだアメリカの映画製作陣の見立ても、どちらも稀有なイノベーション。再現性がなさそうな、この奇跡的な一連の流れにも、同じもの作りに携わる作家として感服します。

No.1049「TOY LIFE」ポップアップバナー

SHARE ON

FEATURED MOVIES
おすすめ動画

BRUTUS
OFFICIAL SNS
ブルータス公式SNS

FEATURED MOVIES
おすすめ動画