東京が誇る匠の“技”は何を生み出すのか。江戸東京の伝統に根差した技術やノウハウの展覧会『何が生まれる?展』

近年、展覧会が多様化している。例えば2026年3月6日〜8日の3日間開催される『何が生まれる?展』は、従来のように作品が主役ではなく、それらができるまでの舞台裏、“技”にフォーカスした新感覚の展覧会だ。「何が生まれる?」という想像をかきたて、子どもから大人まで楽しめる内容になっている。

text: Chihiro Kurimoto

人の手でしか継承できない“技”こそが東京の宝

四季や感性を味と色彩、形で表現する和菓子に、繊細な手作業により生み出される江戸切子、極小の文様を染め抜く型染め……。東京都にはこういった逸品を生み出す、100年以上続く老舗が3,000軒を超えて存在し、その匠の技だけでなく人々の暮らしに根差した美意識や精神性も継承されてきた。

私たちが普段目にするのはそうした逸品の完成形だが、長年にわたり蓄積されてきた技術やノウハウもまた人を魅了する力があり、“東京の宝”である──。そんな思いから2016年に発足したのが、東京都の〈江戸東京きらりプロジェクト〉だ。東京の貴重な財産であるこうした“宝”は、保護するだけではなく、多くの人々にその魅力を知ってもらい、生活の中で使ってもらってこそ「東京のブランド」としての価値を認知され、未来に引き継がれていく。そんな考えから生まれたコンセプトは、“Old meets New”。長い時間をかけて磨かれてきた老舗の名品や匠の技をベースに、現代の感性やライフスタイルに合わせてさらに磨き上げ、新たな価値として未来へつなぐことを目指す。

AIが進化を続ける現代だからこそ、人の手によって磨かれ続け、時代とともに進化してきた“技”は、人の手でしか生み出せない価値を宿している。そうした確かな品質に、いまの暮らしに寄り添う視点を重ね、東京を代表するブランドとして国内外にその魅力を発信している。

これまでに、専門家によるブランディングやマーケティングの支援、海外展開サポート、パリの国際見本市への出展、イベントの開催など、多角的な取り組みを展開してきた。

事業開始から10年という節目を迎え、“東京の宝”を集めた『何が生まれる?展』を3月6日からの3日間、初開催する。

“東京の宝”を見て・体験して・購入もできる『何が生まれる?展』

“時を超えて受け継がれる技”こそが本質的な価値だと考える『何が生まれる?展』。その最大の特徴は、伝統工芸の完成品を目立たせて展示せず、“技”にフォーカスしていること。

制作過程を捉えた音、写真、映像に加え、道具、原材料、廃材などを随所に配置。「ここから何が生まれるのだろう?」という想像をかき立て、ふたを開けたり、扉を開くといった仕掛けの先に、完成した逸品とその背景を伝える解説が現れる。

『何が生まれる?展』イメージビジュアル
『何が生まれる?展』のイメージビジュアル。

今回、展示にあたり43のモデル事業者を、技ごとに「削る」「描く」「組む」「育む」「染める」と5つに分類(上記の画像参照)。それぞれの技を体感できる5つのゾーンで空間が構成される。

〈千疋屋総本店〉や〈セイコーウォッチ〉〈土屋鞄製造所〉のような、誰もが知る有名企業から、江戸職人の技法を受け継ぐ職人が丹念に作る「江戸刷毛」、“粋”が描かれた「江戸扇子」に、極小の文様を染め抜く「江戸小紋」、伝統文様をカットする「江戸切子」、伝統野菜の種である「江戸千住葱」まで、小さな作り手が江戸時代から守ってきた技術も紹介する。

伝統工芸を育んできた歴史、文化、技術から、未来に向けた発展の可能性まで伝える本展覧会。最後には物販エリアも用意しており、展示に登場した逸品を実際に購入することも可能だ。また、職人の技を間近で見られるブースや、体験ワークショップも予定されている。

“東京の宝”を見て・体験して・購入し、生活の中に取り入れてみてはいかがだろうか。

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