多様な活動を経て見据えるブランド20年目
2007年に落合宏理さんが始動させた〈FACETASM〉は、2026年の春夏に発表されるコレクションで20年目を迎える。
16年のリオ五輪閉会式における衣装デザインを手がけて以降、〈ファミリーマート〉の「コンビニエンスウェア」のクリエイティブ・ディレクターや、造船・海運業などを行う常石グループのチーフ・デザイン・オフィサーなど、ブランド外でも大活躍する落合さんにとって、現在の〈FACETASM〉はどんなフェーズにあるのだろう。
「今、いろんな会社と仕事をしているからこそ得られたインプットがめちゃくちゃたまっているんですよ。特に常石では、石上純也さんであるとか〈ウルトラスタジオ〉であるとか、建築家の方との仕事が多く、〈FACETASM〉だけをやっていたら得られなかった気づきがたくさんある。今はそういうものを、〈FACETASM〉に返すフェーズに入っているのかなと。20年目に向けてどうアウトプットできるのか。今からワクワクしています」
その相互循環は既に始まっていると言えるかもしれない。実際、2025-26AWの〈FACETASM〉のコレクションは、常石グループが指揮を執り、建築家集団〈スタジオ・ムンバイ〉のビジョイ・ジェインが手がけた尾道のホテル〈LOG〉のコンセプト、“優しくあれ”がインスピレーションになっているという。
「コンビニエンスウェア」で社会的なメッセージを発信
では、2025年に5年目を迎えた「コンビニエンスウェア」のデザインとはどう向き合っているのだろう。一見すると、コンテンポラリーな要素が色濃い〈FACETASM〉とは、クリエイティブのベクトルが真逆に感じられるが、落合さんの中ではつながっているのだろうか。
「自分にとってのファッションの原体験は、〈ラルフ ローレン〉なんですよ。中学生の頃にビッグポロに出会い、その後、好きで通っていた代官山の〈ネバーランド〉っていう並行輸入のお店で、スプーンとかフォークをまとめるピクニック用の〈ラルフ ローレン〉のベルトをブレスレットとして売っているのを見て衝撃を受けた。
つまり、定番のブランドのちょっと脇にそれた部分に惹かれてきたので、そういうものは意識しなくても自然と〈FACETASM〉のデザインに表れているということがまずあると思います。ただ、その延長で、大量生産の美しさにも魅せられてきた自分もいるんですよ。
例えば、〈ヘインズ〉のパックTとか〈リーバイス®〉の『501』とか。そういうものの中にも自分のスタイルの源泉は間違いなくあるから、デザイナーとしては、『コンビニエンスウェア』を作ることに違和感はないんです」
「ただ」と落合さんは言葉を継ぐ。クリエイティブ・ディレクターとしてすべてをハンドリングしている「コンビニエンスウェア」の場合、「新しい洋服の文化を作る」という思いがより強いそう。
「というのも、ファミリーマートって、全国に約1万6000店舗あって1年間で延べ55億人が利用するんですよ。つまり、ほとんどのお客さんが僕のことを知らない。そういう場所で服を作るからには、メッセージをちゃんと送りたいんです。
ソックスに関して言えば、2月頃に“そろそろ春を感じませんか?”と桜色とか若草色をリリースするとか、“コロナ禍が明けたから元気を出そう”とネオンカラーを出すとか。キャッチボールをしてるんですよ、お客さんと。それがすごく面白い。コンビニには様々な背景を持った人が来るわけで、中には社会的な問題を抱えた人も当然いる。
だから、今社会ではどういう問題が起きていて、それに対してファミリーマートでは何ができるのか。そういうことを話し合いながら開発した商品も、最近はちょっとずつ生まれているんですね。それは自分にとってプラスなことだし、勉強になる。それを次の商品につなげていくことは、今の自分にとって使命なんです」




