肉体的な実感を携え長く歩くということ
ロングトレイルが好きで、10日間ほど山の中を歩き続けることがあります。普通は車や電車、飛行機で行くような距離を歩き切るたび得られるのは、肉体的な実感。テクノロジーの発展と対極にあり、生き物としての自信を取り戻させてくれる長く歩く行為こそ、僕には一番の冒険です。
『スタンド・バイ・ミー』は、その原体験的な映画。少年たちが歩く過程は人生のようでもあるんですよね。一歩を踏み出し続けるのと同様に日々は苦しい。だけど傍らで小さな喜びを見つけたり、仲間の大切さに気づいたりしていく。“ここではないどこか”を求めながら前に進み続ける苦楽のすべてが詰まっています。

4人の少年は死体を一目見ようと30㎞の道のりを歩きだす。'86米/監督:ロブ・ライナー/ハピネット・メディアマーケティング/2,619円(BD)。©1986 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES,INC. ALL RIGHTS RESERVED.
自然の中を歩く恐ろしさを教えられたのが小説『火を熾す』。あらゆるセーフティネットが整った都市と異なり、自然は容赦なく残酷。他人に責任転嫁できない極限の恐怖感も、生き物として忘れてはいけない感覚だと気づかされます。

マイナス50℃を下回るアラスカ・ユーコン川のほとりを、男は一人で歩き続ける。9つの短編が収録された本書の表題作。著:ジャック・ロンドン/訳:柴田元幸/スイッチ・パブリッシング/2,310円。