寿命決定四因子を発見するには?東京大学・定量生命科学研究所の、小林武彦先生が挑む難問

本郷、駒場、柏、飛騨神岡から奄美大島まで、東大の研究室は各地に点在。研究者たちはそれぞれの場所で日々研究と向き合っている。老化研究に取り組む小林武彦さんの研究室を訪ねて、2026年の今、取り組んでいる謎や課題について教えてもらった。

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photo: Kazuharu Igarashi / text & edit: Ryota Mukai

寿命決定四因子を発見するには?

「寿命決定四因子を見つけて、ノーベル賞を獲りますよ」そう言いながらニヤリと笑う小林武彦先生。身ぶり手ぶりを交えて老化研究について教えてくれた。

「老化とは、ゲノムの劣化です。これは生物共通の基本原理。細胞が分裂するたびに劣化が進み、紫外線を浴びれば傷がつく。年を取るほどダメージは蓄積し、例えばがんや認知症の原因になります。そこで大切なのが、ゲノム修復遺伝子です」

DNAが壊れにくい生き物ほど寿命が長いということがわかっている。例えば、ヒトはマウスに比べて10倍以上壊れにくい。実際、修復遺伝子の働きが異なっているという。ヒトが持つ修復遺伝子をマウスに入れ、より寿命を延ばせたものが寿命決定因子だ。

「あと5年で4つくらい見つけたいですね。山中伸弥教授は山中四因子でノーベル賞を獲ってますし」“四”因子はちょっとした洒落……だが、すでに候補はある。例えば、修復を活性化させるサーチュインという酵素はマウスの寿命を20%延ばしたという。

ところでヒトの修復因子を実験に使うなら、マウスの寿命が延びることはあってもヒトでは変わらないのでは?「もちろん、すでにヒトは理想的な修復能力を持っています。ただ、働きをさらに向上させれば、より寿命が延びる可能性はある。

今後、AIがよりベターだと思われる補助因子や構造をデザインしてくれるでしょう。なにより大事なことは、健康でいられる時期が延びるということです。ピンピンコロリと死んでいく。それがベストではないでしょうか」

小林武彦先生
大学院生が研究に取り組むラボで。隣室には、生きた細胞の活動が観察できる蛍光顕微鏡も。

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