斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第44回 Caesars『Paper Tigers』

声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。

photo: Kenta Aminaka / hair&make: Mami Eguchi / text: Soma Saito

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Caesars『Paper Tigers』

今の今まで忘れていたけれど、拙曲「Paper Tigers」の元ネタ……というわけではないが、初めてペーパータイガー=張子の虎(虚勢を張っているだけの人)という概念を知ったのは、このアルバムだった。

ガレージロックというジャンルがある。もとは60年代、ガレージ(車庫)で演奏しているようないろいろな意味で荒い音のバンドのことを指し、この連載でも何度も言及しているロックンロール・リバイバルにも繋がる音楽性だ。

そんな知識を身につけはじめた中学生のころ、まさに自宅のガレージでパンクソングを演奏して隣のおじさんに叱られていた斉藤少年は、彼らのアルバムを手にとった。

全体的にもこもこした音像で、自分がイメージしていたガレージロックの激しさよりは、むしろもっと幻想的な、ともするとサイケデリックな要素を強く感じたのを覚えている。

斉藤壮馬

とにかく彼らの曲はメロディが美しくて、コーラスワークも素敵だ。聴き直していても、無意識のうちにかなり影響を受けていることを再認識した。

とにかく好きな曲ばかりで、ざっと挙げるだけでも以下のとおりだ。

潔いギターのカッティングリフから始まり、単音ギターも絶妙に響くM2「It's Not the Fall That Hurts」。

前回同様こちらもiPodのCMソングとなった(いうほどiPodか?と思わないでもなかったが)キラーチューンのM4「Jerk It Out」。

このバンドの特徴であるオルガンの音が存分にフィーチャーされたM5「May the Rain」。

バンドで集まってみんなで一斉に演奏したら絶対楽しい曲ナンバーワン確定のM11「We Got to Leave」。

タイトルからしてすでに切ない雰囲気満載で、けれどどこか希望すら感じるロマンティックソング、M13「Good and Gone」。

決して難しいことをやっているわけでも、突出したオリジナリティがあるわけでもないのだが、このガレージリスペクトのもこもこ録音と相まって、なんだか繰り返し聴いてしまうのだ。

そして、ぼくがもっとも好きなのがM12「Soulchaser」である。

オルガンの小気味よいリフで始まる冒頭からして、すでに好きになりそうな予感がする。バンドインからすぐ歌い出すのも、そうそうこれこれ、と頷かざるをえない。

そしてサビ。M13にも通ずる、メロウだけれど前向きで、けれどポジティブだけではないメロディ。たぶんぼくは、こういう陰陽のまぜこぜになった音楽が好きなのだと思う。それは中学生のころも今も変わらない。

歌詞もたまらない。特に後半の「A million leaves are falling to the ground」のくだりは、シンプルな表現でありながら、曲の流れで聴くと、もうこの歌詞以外ありえないと感じるくらいベストマッチだ。

彼らの音楽は間違いなくぼくのルーツの一つであり、曲を聴けばいつでも、あのころのガレージに立ちかえることができる。

いつかあのガレージでMVを撮りたいなと、そんなことをふと考えた。

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