10年後のスターは、ここから生まれる?時計師を目指す若い才能たちの学び場へ

世界から熱視線を集める日本の時計を支えるのは、確かな技術を持った時計師たちの存在。そんな時計師を数多く輩出する学校があることをご存じだろうか?将来の時計界を牽引する若い才能たちが集う学び場に潜入した。

photo: Koh Akazawa / text & edit: Shigemi Asaoka

渋谷駅から歩いて程近く、時計師を目指す者を門戸広く受け入れ、初歩から育成している場所がある。〈ヒコ・みづのジュエリーカレッジ〉のウォッチコースだ。

一般的には国内の大手ウォッチメゾンに就職し、社内研修で知識と専門技術を身につけ、チームとして時計製作や修理に携わり時計師となる者が多いが、ここはブランドの垣根を越え時計師を目指すことができる稀少な存在。

日本の学校制度では専門学校の分類に属し、3年間のコースを基本に、その先に1年間をかけ1本の時計をほぼすべて一人で作り上げ独立時計師を目指す時計製作コースも用意されている。

毎年入学者は30名超程度で約半数が高校卒業後に直接入学、残りは大学の理系学部や美術系学部等の卒業者やほかの職種での就業を経て20代後半で入学する者など幅広く、留学生も1割程度存在する。入学動機も、一人でこなせる細かな作業が好きだから、手に職をつけ製造業に専門職として就職したい、独立時計師を目指したいなど様々。

基本の3年間のカリキュラムで学ぶのは機械式時計とクォーツ時計の分解・組み立て・注油・修理や部品の調整、外装研磨や時計工具製作などの金属加工技術に加え、CADなどのプログラミングから時計理論やブランド研究まで実に幅広い。

特徴的なのは授業の教材用のムーブメントが国内外で多く用いられているスイス・ETA社のベーシックなムーブメントからクロノグラフ、メーカーもシチズン、セイコー、レマニアなど多岐にわたり、スイス式の技術トレーニングプログラムを取り入れ質の高い授業が行われている。

これは卒業後に国内外のウォッチメゾンが要求するあらゆる現場でのニーズに対応できる時計師の養成を視野に入れてのこと。時計部品の削り出しに必須の高価な時計旋盤も学生1人1台備えられているのも国内では数少ない環境だ。

3年次には独自の検定試験である「ウォッチメーカーマスター認定試験」が設定され、外部企業の審査員による厳しい審査が行われる。そのレベルは国家試験である「時計修理技能士」をしのぐとも言われる。これらの体制が卒業生の職業選択の可能性を広げ国内外の大手ウォッチメゾンの修理部門を筆頭に、アンティークウォッチの修復、独立時計師、販売等まで多彩な人材を輩出している。

ちなみに前出の菊野昌宏は同校を卒業後独立時計師となり現在は時計製作コースの講師を務め、篠原那由他は同校在籍中に〈A.ランゲ&ゾーネ〉社の主催する『ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード』で日本人初の最優秀賞を受賞した成績優秀者だ。

現在の在学生が数年後、数十年後には時計製造の現場の中心世代となり、日本の時計産業の発展を支え、時計師という職業の裾野の広がりを示していくことは間違いない。

未来のスター時計師を生み出す現場がここにある。

〈ヒコ・みづのジュエリーカレッジ〉ウォッチメーカーコースの授業風景
写真は、学生が機械式時計を組み立てる授業の様子。

時計師の卵たち、その腕元には

〈ゼニス〉クロノマスターエル・プリメロ フルオープン
年齢:20歳

愛用する時計とその理由
〈ゼニス〉クロノマスター エル・プリメロ フルオープン。時計好きになったきっかけの一本。

卒業後は?
独立時計師。
〈ブランパン×スウォッチ〉オーシャン・オブ・ストーム
年齢:19歳

愛用する時計とその理由
〈ブランパン〉×〈スウォッチ〉オーシャン・オブ・ストーム。気分が上がる機械式。

卒業後は?
時計修理師。
〈シチズン〉クロスシー
年齢:20歳

愛用する時計とその理由
〈シチズン〉クロスシー。電波時計のため正確な時刻を確認できる。

卒業後は?
独創的かつ修理が容易な時計製造販売。

彼らの手が作る一本が世界を驚かせるのは10年後?いや、5年後かもしれません。

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