世界のトップライダーが北海道・ニセコに集う。日本初開催となる「Swatch Nines Snow 2026」をリポート

世界中のトップアスリートが集うアクションスポーツイベント「Swatch Nines Snow」がアジア初上陸。そのステージとして選ばれたのは北海道・ニセコ。2026年4月6日(月)~4月11日(土)に開催された様子をリポートする。

text: BRUTUS

競技ではない、大切なのはアスリートが自由に楽しめるか

「Swatch Nines」は特異なスポーツイベントだ。多くのスポーツイベントは競技という側面を持つ。選手たちは記録や出来栄えを競い、勝者が決まる。優勝者は名誉と賞金を得られるが、常に成績を問われる立場に立つことになる。ゆえにアスリートたちに少なからずプレッシャーを与えているのも事実だ。観客やメディアからしても、順位が決まる方がわかりやすい。しかし、「Swatch Nines」は競わない。アスリートを表現者としてリスペクトする。どこまでもアスリートファーストな大会である。

「Swatch Nines Snow 2026」の会場
背後に羊蹄山を望む、「Swatch Nines Snow 2026」の会場。

2008年にスタートした「Swatch Nines」は今年で38回目を迎えた。スキーとスノーボードのウインタースポーツイベントとしてスタートしたが、その後2011年からマウンテンバイクとBMXの「Swatch Nines Bike」、2024年からはサーフィンとスケートボードの「Swatch Nines Surf & Skate」をスタート。世界中のアスリートに自由に表現する機会を提供している。

「Swatch Nines」を運営するThe Nines AGのCEOニコ・ザジェックはイベントの本質は、競争しない点にあると話す。

「私たちにとってスポーツの本質は、競争ではありません。私も元々アスリートですがフォトグラファーやフィルムメイカー、そして親友たちと一緒に楽しむこと、国を背負って滑るのではなく、仲間と一緒に滑ることが根幹にあるんです。スキー、スノーボード、サーフィン、マウンテンバイクといった、『Swatch Nines』で扱っているすべてのアクションスポーツは、本来競技ではないと信じています。競い合うのではなく、世界最高のライダーたちが集まって純粋に楽しむオールスターゲームのような場です。そして、この考え方は2008年から現在まで一度も変わっていません」

そして「Swatch Nines」のユニークさは“セットアップ”と呼ばれるステージにもある。主催者や、設計者やデザイナーに加え、アスリートも会場に集まり、セットアップのアイデアを練るワークショップが開催される。アスリートが大会のスタートから関わる、この特殊なプロセスこそ、「Swatch Nines」の魅力を生み出す原動力とも言える。

ニコは「ライダーたちが自分たちの滑りたいものを自分たちでデザインすべきなんです。だから、彼らに自由にやってもらうんです」とセットアップに対する考えを語る。

これも2008年から変わっていない、「Swatch Nines」のアイデンティティになっている。

スウォッチは2023年より本イベントとパートナーシップ結び、支援を行っている。アスリートの創造性や新しいことへの挑戦する姿勢は、ブランドがもつ精神とも共鳴しており、両者のタッグはこれからも続いていくはずだ。

また、スウォッチでは「Swatch Proteam」というアスリートチームも組織しており、本イベントにも出場した平野海祝など23名が所属している。

北海道・ニセコで、トップアスリートが表現する

「KAISHU’S QP」のセットアップでの平野海祝。
「KAISHU’S QP」のセットアップでの平野海祝。

北海道・ニセコは、今や世界を代表するウインターリゾートとなった。地元や近隣の住人は、「ニセコにはパスポートが必要」と冗談で話すほどに、世界中から良質な雪を求めてスキーヤーやスノーボーダーが集まってくる。会場は2021年にリニューアルしたリゾート施設「ニセコ東急 グラン・ヒラフ」が選ばれた。

アジア初開催の地にニセコを選んだ理由をニコはこう話す。

「私自身アジアが大好きで、これまでに日本や中国へはスキーヤーとして、インドネシアへはサーファーとして、15回くらいは訪れています。でも一番大きい理由は、私たちのイベントに日本のライダーが来てくれるようになったからだと思います。また、ニセコが選ばれたのは世界屈指の積雪量にもあります。このイベントには大量の雪が必要なんです。それに、僕たちは人工雪ではなく天然の雪を使いたい。だからニセコは最高なんです。実際にここへ来て羊蹄山を目にしましたが、本当に素晴らしいですね。ヨーロッパの山々とはまた違った美しさがあります。ここで写真を撮れば、どこに羊蹄山が写っていても『あぁ、日本だ』とすぐに分かります。それは本当に素敵なことだと思うんです」

ニセコでのセットアップも、やはりアスリートがアイデア段階から関わった。2025年の10月ごろ運営チーム、アスリート、設計者らがニセコに集まり、ワークショップが開かれた。

半年かけて何度もやり取りを重ねた末に出来上がったセットアップは4つ。ニセコを象徴する羊蹄山に見立てた円錐形ステージ(頂上部分にはトランポリンが設置されている)が印象的な「MINI YOTEI JIB PARK」や、50mのチューブを設置した「THE TUBE WAVE」、高さ13.5mの「THE NINES JUMP」、日本人唯一のナインズアスリート平野海祝が考案した「KAISHU’S QP」など、ユニークでタフなコースがセットされた。使用した雪の総量は95,000㎥、ニセコだから実現できたコースとも言える。

4月6日にイベントは幕を開けた。初日から世界中からミラノ・コルティナ五輪のメダリストを含む50人以上のライダーが集まり、4つのセットアップで思い思いのクリエイションを披露した。

平野海祝によるクォーターパイプ・マスタークラス、アメリカのジェイ・ロウによる前代未聞のシットスキーによるフレア、フランスのロメイン・アレマンドによる、全長50メートルのレールでの圧巻の50-50フロント360アウトなど、ユニークなコースを存分に使った数々の素晴らしいトリックが生まれた。

会場では、フィルムメイカーやフォトグラファーも決定的瞬間を収めようと、アスリートと共にコースを滑走。「Swatch Nines」にとっては彼らの存在も大きく、収められた映像や写真は感動を世界中に広げる役割を果たしている。

最終日には出場したライダーたちによるベストパフォーマーへの投票が行われるなど、選手同士が互いにリスペクトし合うそんな空気に溢れた6日間となった。

2026年6月15日〜20日には、「Swatch Nines Bike」がオーストリア・ゼルデンで開催予定。ウインタースポーツとは異なった「Swatch Nines」のもう一つの顔が楽しめる機会となりそうだ。

来年の「Swatch Nines Snow」は、スイスのシルトホルン・ピッツ・グロリアで開催予定。2028年には再びニセコに戻ってくることが決まっている。

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