ゆるやかに時を刻む、逗子での日々と、機械式時計
鳥や木々、花に果物──。主に身の回りの自然物をモチーフに、削ぎ落とされた線と余白を生かしてグラフィカルな絵を描く山中タイキさん。黒一色で構成されるものもあれば、落ち着いたトーンの中に1色か2色、鮮やかな色が差し込まれることも。彼が手がける一枚の絵、あるいは一冊の絵本にはいつも、想像を促す豊かな世界が広がっている。
都内から逗子へと拠点を移したのは2019年。海にも山にも近い住宅街の一角に、自宅兼アトリエを構えた。それを機に、かねて続けていたラジオパーソナリティの仕事に加えて、イラストや絵本の制作にも一層本腰を入れて取り組むように。追って、海外絵本専門店兼ブックレーベル〈yackyackbooks〉もスタートさせる。「何かと情報もタスクも多い東京に比べると、逗子では時間がゆっくり流れている気がします。誰に頼まれるでもなく、表現の仕事への意欲やエネルギーが湧いてきたのは、この環境変化がきっかけだと思いますね」と山中さん。現在は妻と3人の子供たちとの5人暮らし。賑やかな日々の中では、一日のゆるやかな流れを決めている。
「仕事は基本的には、子供たちが学校や保育園に行っている9時〜16時にぎゅっと収めています。東京で続けているラジオの仕事も、できるだけこの時間内に行って帰ってこられるようにしていて。こぼれた作業は、早朝か子供たちが寝静まった後にやることもありますが、夜はできるだけ家族との時間を大切にしています」

限られた時間の中で、どれだけのアイデアを生み出し、どれだけ納得のいくアウトプットに仕上げられるのか。クリエイターの仕事に、時間とどう付き合うか、という視点は切っても切り離せない。「神経質に考えず、フレキシブルに向き合っている」と山中さんは話す。
「性格的に約束した時間はきっちり守りたいタイプですが、決め込みすぎると息苦しく感じてしまう。9時〜16時というコアタイムやプロジェクトごとの期日などの大きなタイムラインは意識しながらも、進み具合や状況を見ながら流動的に進めていますね。目の前の一枚に苦戦したら別の一枚に向き合ってみたり、没頭しているときは昼食もとらずに作業を続けたり。いろんな仕事を並行しながら、衝動的かつ感覚的に進められるのが僕にとって心地よいスタイルです」
たまの息抜きには、近所のワインショップ〈EYEON general store〉へ出かけることも。店主で友人の千葉明子さんと束の間の雑談を楽しみ、時にオススメのワインを試したり、購入したり。そんな気分転換の末に、再びアトリエに戻り、机に向かう。
「時間をたっぷりかけたから仕上がりが良くなるかというと、必ずしもそうではないと思うんです。むしろ、時間や予算のような“制約”によって、考える密度が上がって、クオリティに良い作用を及ぼすこともある。1日24時間という持ち時間は人間みんな一緒。その中で、どうやってバランスを取るかを考えるからこそ、生きている実感を得られる気がしています」

EYEON general store
神奈川県逗子市逗子4-1-34 やぐるまビル1F
TEL:無
営:13時〜19時
休:月曜、他不定休
こうした日々の中で時折、ゆるやかに時間を確認するのが、ほぼ常に身につけている腕時計。アクセサリーをつける代わりに根付いた、長年の習慣なのだという。「シリーズエイトはまず、コンパクトなところがいいですね」と山中さん。厚さ10.4mm、ケース径39.3mmという小ぶりのサイズ感が、着け心地の良さを実現している。
「手を動かす仕事なので、大ぶりすぎると使いづらいんですが、これは洋服に引っかからず、自然に腕と一体化してくれます。それでいてデジタル時計にはない、機械式時計ならではの程よい重みがしっかりある。時間を確認するためだけでなく、ファッションの一部としても取り入れているものなので、“時計を身につけている”という喜びと誇りを持てるのが嬉しいです」
普段は、ラフでカジュアルな装いが好み。Tシャツやスウェット、スタンドカラーのシャツなどをよく選び、白や黒、グレーなどの落ち着いたトーンでまとめるのが彼のスタイルだ。シンプルなスタイリングにおいては、「シリーズエイトがさりげないアクセントになってくれそう」。直線的なケースの造りと粗めのヘアライン加工が織りなす、エッジの立った現代的なデザインも、このブランドの醍醐味だ。
「自分の描く絵とも通じるかもしれませんが、ファッションにおいても、細々と装飾的な要素を加えるよりは、全体的に大きくスペースをつくり、1カ所だけ色や質感でアクセントをつけるのが好きです。そのポイントの一つになるのが腕時計。シリーズエイトは、シンプルながらも高級感があり、絶妙にマットな質感が効いています。特に気に入ったのは、グレーとゴールドのツートンカラーのモデル。カジュアルなコーディネートも上品に引き締めてくれそうです」

また、〈シチズン〉が100年以上にわたって機械式時計に向き合い続けてきた伝統と、磨いてきたクラフトマンシップを、随所から感じ取れるのもシリーズエイトならではの特徴と言える。その一つが、文字板に施された繊細な市松模様だ。また裏蓋はシースルーバックになっており、機械式時計特有の、精密なムーブメントが時を刻み続ける様子を、この目で確かめることができる。
「目を凝らさないと見えない、あるいは腕につけたら見えなくなってしまうようなディテールにも、作り手の方々は意識を向け、持てる技術を最大限つぎ込んでいるんですよね。ものづくりへの深い愛情を感じますし、自分もそうありたいと思わされます」
こうしたシリーズエイトへの共感は、彼もまたものづくりに大きな情熱を注いでいるからこそ。中でも特に注力するのが、自らのレーベル〈yackyackbooks〉での絵本づくりだ。その一端を支えるのが、神奈川・藤沢の印刷会社〈TOP Factory〉。「横浜の〈青果ミコト屋〉と一緒に『We Are Flowers』という絵本を制作した際には、コンセプトに合う紙選びについて、かなり密に相談させてもらいました。お仕事をするたび、いつも刺激をもらっています」
今後はさらに、店や企業との協業や、商業出版、海外での展開など、自らのレーベルにとらわれることなく、幅広くプロジェクトに携わっていきたいのだとか。「今は自分が起点になっている仕事が多い分、かなり自由にやれています。でも、たくさんの関係者や予算、そして時間。自分のペースだけでは完結しない、さまざまな制約があるからこそ広がる可能性があると思うんです。制約の中でいかに形にしていくのか、その不確かさに身を委ねてみたいです」

左から、NB6080-51W 159,500円(税込)、NB6085-57W 176,000円(税込)、NB6086-54E 198,000円(税込)(世界限定1,200本)





