地球を尊ぶ旅人のラグジュアリー。東京・赤坂に〈1 Hotel Tokyo〉が開業

米国マイアミ発のサステナブル・ラグジュアリーホテル〈1 Hotels〉が日本に初上陸した。都心のランドマークに臨む高層ビルの贅沢な空間。自然素材を多用した心地よい滞在の中で、環境との付き合い方を教えてくれる。

photo: Kenya Abe / text: BRUTUS

NY在住の日本人デザイナーが手がける、侘び寂びを現代的に解釈した空間

2015年にマイアミとニューヨークで開業して以来、アメリカ国内のほかにカナダ、フランス、アラブ首長国連邦など世界12カ所に展開してきた〈1 Hotels〉。赤坂トラストタワーの38階から43階に位置する〈1 Hotel Tokyo〉が、アジアに初上陸した。

空間デザインを手がけたのは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動する日本人デザイナー、相崎準さん率いる〈Crème〉。ホスピタリティを中心にロゴから椅子、レストラン、建築まで、あらゆる規模のプロジェクトを手がけるデザインスタジオだ。

38階のロビーに到着すると、いちばんにゲストを迎えるのは、苔や再生木材、大谷石を組み合わせた垂直型のボタニカルインスタレーション。ロビー奥に進むと、禅の思想に着想を得たラウンジと石庭が広がり、大きな窓からは東京の街が一望できる。漆喰など質感の仕上げや、枯山水を現代的に解釈した意匠が、都市の高層階にいながら、静かな落ち着きを感じさせる空間をつくっている。

ロビーに併設するバー〈Spotted Stone(スポッテッド ストーン)〉には、50種以上のジャパニーズ・クラフトジンが並ぶ。ただ数を揃えたのではなく、蒸留の思想、ボタニカルの選び方、技法にこだわりキュレーションした。ここでは、それぞれに異なる背景を持つジンを1本ずつ選びながら楽しむ、贅沢な時間を味わうことができる。

同フロアには、南仏リヴィエラと日本の四季を重ねた料理を提供するレストラン〈NiNi(ニニ)〉もある。店名は「2・2(ツー・ツー)」を意味し、2つの海岸、2つの文化、2つのリズムが自然に調和する理念を表している。

ヘッドシェフは、カナダ出身で現地のホテルや東京の星つきレストランで研鑽を積んだニコ・ポリカーピオさん。プロヴァンスのハーブやオリーブオイルに、東京近郊の若手農家や再生農地を活用する生産者から届いた野菜を組み合わせる。食材の仕入れには、都市農業を支援する「東京NEO-FARMERS!」のネットワークも活用している。

魚介は、日本ではまだ導入例の少ない木炭のみを熱源とするチャコールオーブンで焼く。強火で攻めるのではなく、素材の旨みをやさしく引き出す手法だ。

さらに季節ごとに旬の食材で彩るアフタヌーンティーは、エグゼクティブペストリーシェフの郷治文武さんとポリカーピオさんのコラボレーションによるもので、アイコニックなオリジナルの木箱で提供される。

3月は苺と桜をテーマに、桜とホワイトチョコレートのスコーン、苺とラベンダーチョコレートのタルトなど、〈NiNi〉ならではのセイボリーと春の訪れにふさわしいラインナップが並ぶ。

〈NiNi〉は、1日の流れに合わせて、雰囲気もゆるやかに変わる。ランチはシェアできる料理やキリリと冷えた一杯を楽しみながら、ゆったりと過ごす時間。夜になると、ほどよく活気が生まれ、少し華やいだムードになる。週末のブランチタイムにはDJが入り、食事と音楽、会話が空間を満たす、気取らず暖かく、自然と人が集まる、そんなレストランなのだ。

循環する素材で満ちた客室空間が気づきをくれる

客室の壁面を飾る木製のパネルをよく見ると、木目や質感が一つひとつ異なる。これは、このホテル建設時に使われていた足場を解体し、加工し、オーナメントとして蘇らせたもの。役目を終えた足場は通常廃棄されるものだが、ここでは、それが空間を彩る要素に生まれ変わる。

家具の多くはオーダーメイドで、再生素材や天然木を活かしたデザインが特徴だ。全客室には浄水システムを導入し、プラスチックボトル不要に。ワインボトルをアップサイクルしたグラス、メモパッド代わりの黒板など、ウェイストレスにこだわった設えが、滞在を通じて小さな気づきを生む。

こうした選択の背景には、〈1 Hotels〉が掲げる「1 World」の考え方がある。「この地球はたったひとつ。だから、世界を旅する人こそ、この星を大切にしてほしい」そんなシンプルな思想が、ホテルのあらゆる場所に息づいている。

代官山で見せた循環の形

そんな〈1 Hotels〉の理念を伝えるべく、開業に先駆けた2月、〈代官山 蔦屋書店〉で「Share Your LOVE by 1 Hotel Tokyo presented by BRUTUS」がポップアップイベントとして開催された。

会場には、ホテルで使用されるバスローブやスリッパ、オリジナルグッズを展示。また旅先で荷物が増えたとき、使わなくなった衣類をホテルに預ければ、地域のNPO団体を通じて次の誰かへとつながる〈1 Hotels〉の世界的な取り組み「1 Less Thing」。イベントでは体験型プログラムとして実施し、多くの人が足を運んだ。

会場を彩った植栽は、江戸時代から150年以上続く〈野沢園〉によるもの。都心のオフィスで傷んだ植物を横浜の農場で再生し、また都心へ届ける緑の循環の仕組みをもつこの農園のあり方もまた、ホテルが目指すビジョンと重なった。

“足るを知る”という考え方

総支配人の小南正仁さんは、このホテルを「変革のためのプラットフォーム」と呼ぶ。「お客さまに我慢を求めるのではなく、必要な分だけで満たされる暮らしの美しさを、滞在を通して心地よく感じていただきたい」

足場を再利用した壁面も、畑から届く食材も、環境に配慮しているから選んだのではない。その素材や仕組みは、同時に触れて心地よく、眺めて美しく、使って気持ちがいい。正しいから選ぶのではなく、好きだから選ぶ。その結果として、持続可能な選択になる。〈1 Hotel Tokyo〉が提示するのは、都市の中で自然とともに在る、新しい暮らし方なのだ。

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