「the TRUE DIARY show」第6回:アーティスト・フレネシ

毎回異なる著名人を著者に迎え、実際の日付で日記を綴ってもらう連載。今回は、ウィスパーボイスと、パフォーマンス時の顔パネル姿で不思議な存在感を纏(まと)う、アーティストのフレネシさん。

illustration: Sakasano Kasa / text: Frenesi

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1月21日(水)

息子を学校に送るついでに1時間近く考えごとをしながら散歩するのが日課だが、寒さに負けて10分ほどで帰宅。雪が降ってもおかしくないほど風が冷たく、しかし相変わらず空気は乾いていて、天気予報についていたはずの雪マークはあと数時間で消えるのだろう。

朝食にバイロンベイクッキーをいただく。メルボルンから来た甥っ子のお土産で、日本でも認知されればTimtamくらい人気を博しそうな豪州発のスーパーマーケットスイーツだと個人的には思う。カントリーマアムが分厚くなったようなフォルムだけれど、食感はもっとほろほろしていて、工場生産っぽくない自由律の味わいがある。カルディあたりが輸入販売してくれないだろうか。パッケージは洒落ているし個包装でないのが無駄なくてそこもポイント高。

1月22日(木)

今日やるべきことは昨日の音源のチェック。夜聞くと早く聞こえるテンポが、朝だとスローに感じて隅々まで輪郭が浮かび上がる。そうすると途端に気になってしかたない箇所が画面から溢れてくる。またデータの書き出し直し。昨夜は寝ながら修正したのでは?と疑うほど粗が目立つ。自分の耳を信用してはいけないと改めて思う。

Cubaseでケロケロボイス化を試す。レベルを慎重に調整するも、全然思った感じにはならず、単に本来の魅力を失っただけになってしまって悲しい。触り慣れない機能を使うと好奇心にセンスと筋力が追いつかず、道具の遠心力に負けたような、残念な仕上がりになる。ろくろ、業務用のポリッシャー、ソフトクリーム製造機、あるいはチェンソー、そういう感じ。追々使い慣れていくべき機能は無数にあるのだろうけれど、自分の脳の役に立たない部分くらい使えていない状態で、どっちもまあまあもったいない現状だとは思う。

TLに流れてきた〈Trooper Salute〉を聴く。わー!めちゃくちゃ良いのでは?名古屋発なのか。あの頃のレコ屋も雑貨屋もカフェもいつしかなくなって、私が学生だった頃の名古屋とはもはや同じではないのだろうけれど、そこには地続きで姿を変えつつの共通項が何かしらある……ような気もする。

古本屋で昨年末100円で買った別冊宝島『レトリックの本』を、本件の執筆に役立ちそうな気がして音楽作業の合間合間にめくってみる。ちゃんと読むのは今日が初めてと気付く。積読が作業台の周りを覆っている。借りた本など期限のあるものから優先的に読まれ、買った積読はいつだって後回しになりがち。

1月23日(金)

風のない朝。原っぱまで散歩する。隣接する高校の吹奏楽部の練習を聞きながら次の曲のプロットを考える。キーワードが箇条書きで脳裏に並ぶ。こういうとき、私は実写ではなく文字が映像として浮かぶタイプなのだけど、映像で考えようとすると経験値にあるものがそのまま出てくるだけで自由度が低いように感じる。映像作家の方は未知の映像が自由に浮かぶのだろうか?

自由な映像といえば、片頭痛の新薬を試した際に100本立てのショートフィルムを強制的に見せられているような夢を見た。寝ているのにも関わらず、寝起きは徹夜したときより疲労感があり、二度と飲みたくないと感じた薬の一つ。脳をハックされた感じ。海外の臨床試験において、服用で異常な夢を見るなど睡眠障害が報告されているらしく「たかが夢」と副作用を看過できない私には合わなかったということだ。

昨日知った〈Trooper Salute〉を、自分と同じ時代に名古屋の音楽シーンにいた当時バンドマン、現眼鏡デザイナーのatelier kikiki小幡君にも共有。「相対性理論meets小島麻由美」とは、言い得て妙。私のライブ用の同期音源を古いPCから復元してくれた。ありがとう!

1月24日(土)

午前中は息子を連れてプールへ。冬泳ぐのは億劫じゃない。むしろこの時期は時間帯を問わずガラガラに空いていて、周りを気にせずいられることに大いなる価値を感じている。

午後は、楽曲提供した〈Negicco〉Meguさんのリリイベで、テルミン奏者の街角マチコさんと共に吉祥寺のキチムへ。Meguさんはジャケ写とは雰囲気の異なるマーメイドシルエットの白い衣装で登場。sugarbeansさんのエレピにMeguさんの歌のみというコンパクトな編成がいずれの楽曲をも引き立て、心地良い。楽曲の合間のほわほわしているのにキレキレのトークが素晴らしくて聞き入ってしまう。提供曲「めしませルルボン」を生歌で聴けて感涙。ライブの最後に、私もステージへ。ソープフラワーの花束を持って渡す。

1月25日(日)

午前中は学校主催のペアレントトレーニングに参加。他の家庭の素晴らしい子育てエピソードに「ほええ……」と感心しきりの2時間だった。講師の寄り添い方がプロフェッショナルで、私のような褒めるところのあまりない親にも平等に優しい。

夫が復帰祝いにバッグをプレゼントしたいというので表参道へ。人前に出る機会が以前より増えたのに、どこへ行くにも〈Tnewties〉のノベルティかムック本の鞄を愛用しているのが気になるらしい。私以上に私の持ち物を気にかけてくれるのはありがたいが、正直、顔パネルが入ればそれでいいと思っている節は確かにある。明るくはない分野なので、ChatGPTにコスパの良いハイブランドを尋ねたらしい。ハイブラには縁のない人生だが、それならばと興味が持てた。

目的の店に到着すると長い行列ができていて、とりあえず5分ほど並ぶも寒空の下息子まで付き合わせるのは申し訳なく思い「平日に一人で来るか、オンラインで買うからいいよ」と列から外れる。帰りに青山のキルフェボンでタルトを3カット買って帰宅。

1月26日(月)

息子が帰ってくる17時半まで曲作り。3曲分の並行作業。9割出来ている曲、4割出来ている曲、1割出来ている曲。仕事でも何でもない曲作りを、遊んでいるだけではないかと不意に後ろめたさが襲う。

次の曲のジャケ画を試しに描く。経験則ではとりあえずで描いた下絵が良いことが多く、気負わず描きたいものを描く。楽しくなり必要ない絵まで量産。結局一日中遊んで過ごしてしまった気がする。

1月27日(火)

連載「ネシ子が会う」第二十回のインタビュー記事の序文と結びを執筆。インタビュイーの回答が最高で何度も読み返してしまった。記事を公開するのが楽しみ。

今日は解禁情報の日。11年ぶりとなるライブ出演を発表。反響があって嬉しい。ここでネックになるのが顔出しNG問題。オーディエンスとの距離は近い。さて、どうしたらいいんだろうね、私は。

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